全 情 報

ID番号 04680
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 東京出版販売事件
争点
事案概要  非協調的性格、勤務成績不良等を理由として就業規則の「やむを得ない経営上の都合があるとき」に該当するとして解雇された者がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 已ムコトヲ得サル事由(民法628条)
裁判年月日 1959年2月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和32年 (ヨ) 4070 
裁判結果 認容
出典 労働民例集10巻1号29頁/タイムズ88号107頁
審級関係
評釈論文 瀬元美知男・ジュリスト193号98頁/労働経済旬報404号17頁
判決理由 〔解雇-解雇事由-已ムコトヲ得サル事由(民法628条)〕
 申請人は事務処理につき同僚と比べて劣るところが認められないのであるから他の同僚が他の職場に配転されたように申請人も配転される筈であると考えられるのに、職場から排除される程に重大視するに足りない職場離脱と命令不服従及び非協調的性格を理由として配転不能とするところに納得し難い点がある上に配転拒否の形式を整えるための作意的傾向がうかがえるし、解雇時における職制の申請人に対する意見の開陳及び会社が申請人の組合活動を嫌悪したこと等、以上認定の事実を総合して考えると会社が申請人を職場から排除しようと決意したのは、申請人の勤務態度ではなくして、組合活動を嫌悪しその言動の職場に及ぼす影響を慮り、これが職場秩序を乱すものと考えたのが真の理由と認めるのが相当である。従つて命退職通告は労働組合法第七条第一項に該当する不当労働行為であつて労働関係の公序に反し無効であるといわねばならない。なお被申請人は本件解雇は民法第六二七条、第六二八条の解雇の意思表示を含む旨主張する。しかし仮にそうだとしてもその意思表示が前記のように不当労働行為であるとする結論には変りがないわけであるからこの主張も理由がない。
 五、結 論
 以上のとおり本件命退職通告は無効と判断すべきであるから、被申請人と申請人との間にはなお雇用契約が存続しているというべく、また被申請人は昭和三二年七月一六日以降申請人を職場より排除し労務の提供を受けないのであるから申請人は被申請人に対し同日以降の賃金請求権を有する。