ID番号 | : | 04689 |
事件名 | : | 仮処分取消申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 淀川製鋼所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 解雇された従業員が従業員として取り扱うべきことおよび賃金支払の仮処分を得ているのに職場復帰の措置につき使用者がにえきらない態度をとっていたことに腹を立て夜間酒に酔って工場に侵入し保安係の退場の指示に従わなかったこと等を理由として懲戒解雇されその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1959年7月20日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和32年 (保モ) 1197 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集10巻4号662頁/時報197号23頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の限界〕 右(一)の(4)(5)記載の被申立人の行動は、就業規定の懲戒事由に該当するものといわねばならないが、前記甲第一号証の就業規則によれば、懲戒の種類は一、譴責、二、減給、三、解雇の三段階に分れており、その選択は使用者に委ねられているとはいえ、決して恣意的な選択を許すわけではなく、客観的に妥当なものでなければならないのは、いうまでもないところであつて、とくに懲戒処分中懲戒解雇は、従業員を企業外に排除する最も重い処分であるから、懲戒権が企業秩序維持の目的に奉仕するものであることに照し、違反者をそれ以下の軽い処分に付する余地を全く認めがたい場合に限つて許されるものと解するを相当とする。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕 (ニ) 証人A、Bの各証言によると、昭和三二年七月頃、勤務時間中二名の工員間でもめごとが起り、一方が長さ約二尺の火箸で、他方の背後から二度なぐりつけ、一〇針ぐらい縫合手術を要する傷害を与えた事件があり、職場会議でも問題にされたが、結局、加害者は減給処分に附されたのみであつたこと、その他C、D間の殴打事件等従業員相互間の暴行、傷害事件は必ずしも稀れではないが、最近四、五年の間に、懲戒解雇処分がなされたのは被申立人を除いて他にないことが認められる。本件は、前説示のとおり、単純な暴行、傷害事件に属するものではないが、会社が被申立人の暴力的性格に着目して本件解雇に及んだことは、その主張に徴し明白であるから、右のような前例との均衡も十分に考慮されねばならないものと考えられる。 右(イ)乃至(ニ)の事情に加えて、前記懲戒事由該当行為の具体的な内容、会社に与えた被害の程度、その他諸般の情状を綜合すると、本件については、情状軽減の余地が認められ、したがつて、会社が被申立人を他の種類の懲戒処分に附するは格別、最も重い懲戒解雇に附し、完全にその反省の機会を奪い去り、企業外排除をはかつたのは余りにも過酷であるというべく、結局情状の判定を誤り、ひいては、就業規則の適用を誤つた無効の解雇であるというのほかはない。 |