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ID番号 04693
事件名 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
いわゆる事件名 帝国興信所事件
争点
事案概要  信用等の調査を業とする会社の従業員が会社保管の信用調査書を競業会社に横流ししたとして懲戒解雇されたのに対し不当労働行為であるとして争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働組合法7条1号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1959年8月27日
裁判所名 仙台高秋田支
裁判形式 判決
事件番号 昭和32年 (ネ) 88 
裁判結果 控訴棄却
出典 労働民例集10巻4号701頁
審級関係 一審/秋田地/昭32. 6. 5/昭和30年(行)13号
評釈論文 ジュリスト206号81頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 以上説示の如く参加人等全員に既調横流の行為、参加人A、同Bに内職の事実があつたことが認定しうるところであり成立に争のない甲第五号証によれば右各所論は被控訴会社の就業規則に規定する懲戒事由(右規則第六五条第一〇号乃至第一二号)に該当する非行たることは明らかである。而して成立に争のない甲第一号証ノ一乃至三、同第一二号証ノ九原審証人Cの証言等によれば被控訴人が参加人等を懲戒処分に付した理由は右非行のためであることが確認できる。興信所がその人員、費用を以て調査した他人の信用状態の調査報告書はその内容が業務上の秘密事項に当り且つ興信業務遂行上最も必要且つ重要な物であることは勿論であつてこれを軽々に他の競業者に横流をなすが如き所為は恐らくは使用者たる会社に対する最も重大な背信行為の一つである。また勤務先の出張の際に競業者のために調査を代行すること而してその報酬を得ることも既調横流に劣らざる非行と認められる。元来雇傭関係は本質的に信頼関係に基礎を置くものでありそれが破壊された場合にはその終了を要求しうるのは当然の事である。本件の場合訴外Dは元参加人等と共に被控訴会社に勤務し参加人等においては指導を受け且つ退社後も親交を続けてきた仲であるとは云へその事のみで本件横流等を行つたものでなく右Dと参加人等とはE支所長との間にあつれきあり場合によつては参加人全員F会社に勤務替しようと云うような動きがあり(右事実は証人G、H等の証言により明らかである)これ亦本件非行の動機の一つと目されるのであるから非行の動機も亦決して軽微とは認めえない。なお前記証人Iの証言及び同人の作成に係る口述書(甲第二号証)によれば横流の数量は一〇〇部内外に及ぶことが認められ更にGの証言及び同人の作成した覚書(甲第三号証)によれば参加人全員が横流に関与していることが認められるのであるから本件非行はその質及び量何れの面よりするも重大な非行と云うべきである。されば被控訴人が参加人等に対して採つた懲戒処分は何れも相当と認められる。