全 情 報

ID番号 04714
事件名 意思表示の効力停止等仮処分申請事件
いわゆる事件名 四天王寺国際仏教大学事件
争点
事案概要  大学専任講師に対する懲戒解雇を無効とする仮処分決定の翌日に同人に対してなされた自宅待機命令に対し、右専任講師が右自宅待機命令の効力停止、図書館、研究室等の利用、教授会出席に対する妨害禁止の各処分を求めた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停
裁判年月日 1989年2月8日
裁判所名 大阪高
裁判形式 決定
事件番号 昭和63年 (ラ) 502 
裁判結果 棄却
出典 労働判例551号84頁
審級関係 一審/04002/大阪地/昭63. 9. 5/昭和63年(ヨ)1665号
評釈論文 戸谷茂樹・労働法律旬報1215号25~27頁1989年5月10日/上村雄一・労働法律旬報1226号11~18頁1989年10月25日/石川明・慶応義塾大学法学部法律学科開設100年記念論文集 法律学科篇37~54頁1990年9月
判決理由 〔解雇-解雇と争訟〕
 抗告人は、まず、本件命令により、大学内の研究室を使用できず、その他、教員及び学生との交流ができないことにより、研究上多大の不利益を受け、研究に支障を来している旨主張する。一件記録によれば、抗告人は相手方から教室棟四七〇号室約三〇平方メートルを貸与され、同室内に洋学史、幕末、明治期の資料等を含む数百冊の書籍を置いて研究、教育の職務に従事していたこと、相手方は本件命令後、抗告人に対し右入室を禁じ、昭和六三年七月七日までに口頭又は書面で右研究室内にある抗告人の書籍、資料等の私物の引取方を要求し、これを引取らない場合は抗告人の費用負担で抗告人方に送付する旨通告してきたが、抗告人は現在の住所地のアパートではこれを収納する場所的余裕がないことを理由として右要求に応じていないこと、右研究室の鍵は現在抗告人所持のものとは別の鍵がつけられていることが一応認められる。右事実によれば、確かに抗告人の研究につき多少の支障・不便を来していることは否定することはできない。しかし、抗告人の研究にとって、大学研究室における研究がそのすべてではないし、特に右研究室における研究が現時点において必要不可欠であると認むべき疎明はない。すなわち、抗告人は、右研究室内にある私物のうち研究に必要なものは相手方にその引渡を求めることができるし、右研究室内にある私物以外の相手方管理にかかる書籍資料等についても、相手方は特段の理由のない限り抗告人の引渡又は貸与要求を拒否することはできないと思料されるからである。また抗告人主張の他の教員等との交流についても、学生はともかく、教員相互については、特に右研究室でないと研究上の意見交換ができない訳ではない。抗告人は、現在の研究室の状態では、中にある書籍等が損傷するおそれがある旨主張するが、右損傷による損害については、後に損害賠償請求によって十分救済される余地がある。また疎明の中には、研究室内にいて書籍等を漠然と眺めている雰囲気自体が研究にとって重要な要素であるとの見解もあるが、にわかに措信し難いし、仮にそうであるとしても、右については、別途慰謝料請求によって救済される余地がある。さらに一件記録によれば、抗告人については、これまでの研究業績としては、昭和六二年四月二〇日にA書に登載された一論文のみであることが一応認められるところ、抗告人は、本件命令のため昭和六三年五月投稿予定の論文が〆切に間に合わなかった旨主張するが、本件命令との間の因果関係を肯定すべき疎明はないし、現在、抗告人がどのような具体的な研究テーマを有しているかについても疎明がない。