ID番号 | : | 04726 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | エム・ジー企画事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 海外芸能人の招へい、興業を目的とする会社が、右芸能人の招へいに関し法務省が査証発注手続として行なっている事前審査終了証制度は職安法、労働者派遣法に違反し、右制度により営業上の損失をこうむったとして国に対し損害賠償を求めた事例。 |
参照法条 | : | 職業安定法32条1項 労働者派遣事業の適正運営確保及び派遣労働者の就業条件整備法4条3項 国家賠償法1条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 中間搾取 |
裁判年月日 | : | 1989年3月22日 |
裁判所名 | : | 岡山地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ワ) 340 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例540号78頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-中間搾取〕 1 職安法三二条一項は、各人にその有する能力に適当な職業に就く機会を与えることによって、職業の安定を図ることを目的に、紹介者が報酬を得るために労働者の利益を顧慮することなく雇用契約の成立に邁進し、労働者を不利益な労働関係に入らせる虞が大きい有料職業紹介(職業紹介とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用契約の成立をあっ旋することをいう。)事業を原則的に禁止し、政府が自ら公共職業安定所において無料で職業紹介を行うこととし、ただ、例外的に、美術、音楽、演芸その他特別の技術を必要とする職業に従事する者については、その技術に精通していなければ職業紹介を行うことが困難であったり、公共職業安定所においてその職業紹介を行うことが技術的に困難であったりすることから、労働大臣の許可を得た者に限り、有料職業紹介事業を行うことを認めているのであり、右許可要件についても、職安法は、三二条二項において、労働大臣は、予め、許可申請者についてその資産の状況及び徳性を審査する旨規定しているに過ぎず、既存業者の営業上の利益を保護していることを窺うに足りる規定は、職安法その他関係法令を精査してもこれを認めることができない。 したがって、既存業者が右許可によって享受する利益が存在するとしても、その利益は、右許可の根拠法規である職安法三二条一項の目的である職業の安定という公益の保護の結果として生じる反射的利益又は事実上の利益であって、同法条の違反のあることを理由に、国家賠償法又は民法に基づいて損害賠償を請求することができる権利又は法律上の利益とはいえない。 2 また、労働者派遣法四条三項は、職安法と相まって労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の就業に関する条件の整備等を図り、もって派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的に、同条一項により労働者派遣(労働者派遣とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない。)事業を行うことができる旨定められている適用対象業務以外の業務について、労働者派遣事業を禁止しているもので、これにより他の業者の営業上の利益を保護しているものではないことが明らかである。 したがって、労働者派遣法四条三項が適用対象業務以外の業務について労働者派遣事業を禁止していることによって他の業者が享受する営業上の利益が存在するとしても、その利益は、右規定の目的である派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進という公益の保護の結果として生じる反射的利益又は事実上の利益に過ぎず、同法条の違反のあることを理由に、国家賠償法又は民法に基づいて損害賠償を請求することができる権利又は法律上の利益とはいえない。 3 そうすると、原告に、国家賠償法又は民法に基づく損害賠償を請求することができる権利又は法律上の利益の侵害があるとはいえない。 |