ID番号 | : | 04730 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 岡崎工業・高千穂工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 運転資格のない者がクレーン操作中に吊り上げていた物が落下して右足をはさまれて負傷した事故につき被災労働者が使用者(元請、下請)に対して安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1989年3月24日 |
裁判所名 | : | 千葉地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和59年 (ワ) 389 |
裁判結果 | : | 一部認容(確定) |
出典 | : | タイムズ712号179頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 事故の発生原因としては、後記のとおり、原告が本件クレーンの操作を誤ったことを指摘することができるのであるが、被告らは、「本件クレーンを操作して走行中のものを停止させるには、それなりの習熟度を必要としたのに、これを運転する資格を有していない者がクレーンを操作していたのを黙認していた。走行用スイッチを切るだけでは、滑走を制御することが困難であったから、滑走による危険を防止するために走行ブレーキを取り付ける必要があったのに、これをしなかった。」という点において、原告に対する安全配慮義務を尽くさなかったと認めるのが相当である。すなわち、被告らは、いずれも債務不履行の理由により、原告に生じた損害を連帯して賠償すべき責任がある。 六 前記のとおり、原告は、本件クレーンを運転する資格を有していなかったのに、クレーンに二点掛けのハッカーを使用して仮溶接済みのリングを吊り下げ、これを西方へ移動させていたところ、行き過ぎたため、反対方向(東方)への走行用スイッチを押したものの、リングが西方に揺れて、角材の上に置かれた他のリングに当たり、仮溶接部分が破損して、これに右足をはさまれた。 〈証拠〉によれば、本件クレーンに仮溶接のリングを吊り下げて移動させる作業を、一人でクレーンを操作しながら行うことは危険であった事実を認めることができる。 〈証拠〉によれば、被告Y会社は、三点掛け用のハッカーを用意しなかった事実を認めることができるのであるが、〈証拠〉によっても、二点掛けのハッカーを使用したのでは、移動中のリングの安全性が損なわれた事実を認めることができる。 〈証拠〉によれば、クレーン運転士教本には、「クレーンの運転中、故意に逆ノッチを入れ、減速させることを逆相制動といい、運転を急停止させたい場合にしばしば使われている。」と記述されている事実を認めることができる。しかし、〈証拠〉によれば、原告が、走行中の本件クレーンが行き過ぎたとして、西方への走行用スイッチを切り、直ちに東方への走行用スイッチを押したことは、リングを西方に揺れさせることになって、適切でなかったと認めるのが相当である。 したがって、原告は、本件クレーンに仮溶接のリングを二点掛けで吊り下げ、これを西方へ移動させるという危険を伴う作業を行おうとしたのであるから、補助者の手を借りるとか、走行用スイッチの操作に気を配るとかして、安全に作業を進めるべきであったのに、これを怠り、そのために事故を引き起こしたと認めるのが相当である。 すなわち、事故の発生については、原告にも過失があったと認めるべきであり、過失の程度は三割に当たるものとして、これを賠償額の算定に当たって考慮するのが相当である。 |