ID番号 | : | 04731 |
事件名 | : | 仮処分異議申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 国鉄直方自動車営業所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 運賃料金割引券を職員間で譲渡したことを理由として国鉄職員が懲戒解雇された事例。 |
参照法条 | : | 日本国有鉄道法31条 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 |
裁判年月日 | : | 1989年3月24日 |
裁判所名 | : | 福岡地直方支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (モ) 9 |
裁判結果 | : | 認可 |
出典 | : | 労働判例540号73頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕 3 債権者は、国鉄職員として二八年間勤務してきた者であり、本件免職処分により退職金は支給されないことは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、債権者はこれまで懲戒処分を受けたことは一度もなく、懲戒を行う程度に至らない訓告処分を一、二回受けたに過ぎないものであることの疎明が得られる。 4 債務者が主張する如く、国鉄職員の不正行為については一般私企業の職員の場合と比較してより厳しい処分がなされるべきであるとしても、(証拠略)中の東京地方裁判所昭和五八年(ワ)第一三一二号事件(団体交渉応諾義務確認請求事件)の被告たる本件債務者(国鉄)は、同事件において、乗車証制度(鉄道乗車証制度)の性質につき、「過去において被告が発行していた乗車証には各種のものがあるが、その内容はいずれも一定の事由により公共性の強い国鉄の運賃を免除するというものであるから、これらの乗車証の発行は公共財産である企業体の経営を委ねられている被告がその事業運営上の必要等に応じて適切な判断の下に行う裁量に委ねられているものである。そして、こうして発行された乗車証を交付されたことによって職員が受ける利益は、ひとえに被告の業務運営についての裁量による事実上の利益にすぎないのである。」旨主張するところであるから、割引券についても右と同様に国鉄の業務運営についての裁量による事実上の利益であるとみることができるとすれば、割引券の右のような性質と債権者の本件行為が職務上の不正行為でないことも本件免職処分の効力を判定するにつき考慮すべきことがらである。 5 以上の諸点を総合すれば、債権者の本件行為が多数枚の割引券の不正使用であり、国鉄において職場規律の確立のため全力を傾注している最中での不正行為であることを考慮しても、本件免職処分が社会通念に照らし合理性を有するものとはいえず、債務者が有する懲戒権を濫用したものであって、無効であるというべきである。 |