全 情 報

ID番号 04752
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 東京教育図書事件
争点
事案概要  組合委員長および副委員に対してなされた整理解雇につきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法20条
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の回避努力義務
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1989年5月8日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和63年 (ヨ) 2269 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例539号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の回避努力義務〕
 前記三1において判断したとおり、確かに本件整理解雇当時債務者の財政状況は悪化していたが、右一応認定の各事実によると、債務者は、契約教室数や生徒数の増加を図るための積極的な努力をしたものとは認められず、また、債務者は一時帰休や賃金切下げ等の解雇回避措置といいうる行為を行ったという疎明はなく、さらに、債務者は、契約教室からの納入額の増加変更や生徒の会費の値上げをすることは、簡易な方法であるが、他塾との競争もあり、安易に行うことはできないと主張しながら、本件整理解雇後の平成元年一月になって、右値上げ等を打ち出していることなどからすると、債務者が本件整理解雇を回避するために信義則上相当と認められる努力をしたものとはいえない。
 また、右一応認定の各事実によると、債務者の組合に対する希望退職募集及び整理解雇についての事前の協議、説明が十分になされたとは認められず、その原因の一端は組合にないわけではないが、債務者は、希望退職募集の条件を示すだけでそれ以上の具体的説明をほとんどせず、頑な態度に終始し、またその後の債務者の対応からみても、相当な努力を払ったものとはいい難い。
〔解雇-整理解雇-整理解雇基準〕
 債権者らについて人事考課がなされており、その評価はかなり低いものであること、右人事考課の成績等に従って本件整理解雇がなされたことが一応認められる。しかしながら、審尋の結果及び(疎明略)の形式、作成経過等からすると、債務者の人事考課が従前から定期的に行われていたものではなく、しかも、右人事考課は従業員の一部についてしかなされていなかったことが一応認められ、右一応認定の事実と前記三2の一応認定された各事実とを総合すると、債務者は、組合結成後組合員に対する過剰な業務命令とその命令違反等を前提とする、計画的とも思える人事考課に基づき、組合の分会委員長及び分会副委員長である債権者らを本件整理解雇の対象者として選定したものと推認することができ、本件整理解雇は公平な整理解雇の対象者の選定を行ったものとは到底いい難い。
 4 以上のとおり、本件整理解雇は、整理解雇の必要性を認めるに至らず、解雇回避措置や事前の協議、説明に信義則上要求される努力を払ったものとはいい難く、また、対象者選定の合理性も欠くものであって、全体として解雇権の濫用として無効といわざるを得ない。