ID番号 | : | 04754 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 全自交高槻交通労働組合事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | タクシー会社の従業員で組織するA組合のストライキおよびピケッティングによってA組合と組織的連帯関係のないB組合の組合員が就労できず賃金が支払われなかったことにつき、使用者に右不就労期間中の賃金支払を求めた事例。 |
参照法条 | : | 民法536条2項 労働基準法11条 労働基準法3章 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 一部スト・部分ストと賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 1989年5月15日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和58年 (ワ) 4989 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働民例集40巻2・3号340頁/タイムズ723号212頁/労働判例556号62頁/労経速報1389号10頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 浜田冨士郎・ジュリスト984号202~205頁1991年8月1日 |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権の発生-一部スト・部分ストと賃金請求権〕 (三) このような場合、原告らが賃金請求権を有するか否かについては、個別の労働契約上の危険負担の問題として考察すべきである。したがって、本件ストが民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」に該当する場合には、原告らは被告会社に対し賃金請求権を有すると解される。 (四) ストライキは労働者に保障された争議権の行使であって、使用者がこれに介入して制御することができず、また、団体交渉において組合側にいかなる回答を与え、どの程度譲歩するかは使用者の自由であるから、団体交渉の決裂の結果ストライキに突入しても、そのことは一般に使用者に帰責さるべきものということはできないが、使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもってことさらストライキを行わしめたなどの特別の事情が認められる場合には、右ストライキは民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」に該当すると解するのが相当である。 (五) 原告は、原告らと組織的連係のない労働組合によるストライキ及びピケットは使用者の責めに帰すべき事由に該当する旨主張するが、右見解が採用できないことは右のとおりである。 (六) 原告は被告会社の帰責事由として、【1】共済会に関する事項について本件スト前の団体交渉において協議を尽くさなかったこと、【2】実力行使または仮処分申請という法的手段をとっていないこと、【3】自交総連労組に対し協力を求めなかったことを主張する。前述のように団体交渉における回答内容及び譲歩の程度は使用者の自由であるから、【1】の点は帰責事由には該当しない。自力救済行為は原則的に禁じられており、被告会社には実力をもってピケットを排除する義務はないし、仮処分申請をすればピケットがより早期に解除されたとは認め難いから、【2】の点も帰責事由には該当しない。自交総連労組はピケットの排除は被告会社の責任であり、右排除には協力しないとの立場をとっていたことは前認定のとおりであり、同労組に協力を求めていれば本件ストやピケットがより早期に解決されたとは認め難いから、【3】の点も帰責事由には該当しない。その他、被告会社の帰責事由を構成する事実は認められない。 (七) 以上のとおり、被告会社の帰責事由は認められないから、原告らは賃金請求権を失うと解するのが相当である。 |