ID番号 | : | 04757 |
事件名 | : | 公務外認定処分取消等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 横浜市保母事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 保育園で保母として勤務していた者が業務に起因して頚肩腕障害に罹患したとして使用者に対し安全配慮義務違反で損害賠償を請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法1条2項 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1989年5月23日 |
裁判所名 | : | 横浜地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (行ウ) 24 |
裁判結果 | : | 一部認容(控訴) |
出典 | : | タイムズ709号181頁/労働判例540号35頁/判例地方自治61号18頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 堤浩一郎、篠原義仁、三浦守正・労働法律旬報1218号9~12頁1989年6月25日/棟居快行・判例地方自治66号20~22頁1990年3月 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 前記のとおり保母の労働はたえず乳幼児全体の行動を常時観察、把握し、その行動に対処しなければならず、しかも他の乳幼児に対する介助等と同時的、並行的に行わなければならないことから、たえず精神的緊張を要求される労働であること、乳幼児の身体的条件、行動に合せた労働であるため、無理な作業姿勢をとり、上・下肢、腰部等へ負担となることの多い労働であり、また、十分な休憩もとらずに間断なく職務につかなければならないから、疲労度の高い労働であり、疲労の蓄積によって健康障害、特に頚肩腕障害、腰痛等が発症する蓋然性が高いなど、保母労働の一般的特性に加え、新設の保育園は開園準備それ自体で、多忙をきわめるのに、同僚保母職員は経験不十分であったことから、原告は保母職員の中で指導的役割を果さざるを得ず、しかも、原告自身新任の主任保母として未経験の重要な任務を担当することにより肉体的、精神的負担が大きく、かつ、休暇も十分に取得できなかったなどを総合すると、本件障害は原告の保母労働に起因して発生したものと認めるのが相当である。さらに、保母の休暇取得その他によって変則的な保育を余儀なくさせられたことも本件障害を増悪する原因となったものと認めるを相当とし、これらを覆すに足りる証拠はない。 〔中略〕 右によれば被告は市立の保育園に保母、作業員等適宜な人員を配置して業務量の適正化ないし軽減化を図るとともに、保母らのために十分な休憩時間を設定・確保し、休暇を保障し、かつ、施設を整備し肉体的・精神的疲労を防止し、保母の健康障害の発生を防止すべき義務を怠ったと認めるを相当とする。 被告は原告に対し昭和四七年から同四八年にかけて通院職免を与えたことは前認定のとおりであり、また、〈証拠〉によれば昭和五二年に実施された特別健康診断の結果、原告は腰部、肩腕、上肢の柔軟体操の励行、一時的作業量の軽減の指示を受けたこと、また、口頭で一時間仕事をしたら一〇分休むように指示されたこと、しかし、右の指示は原告が実際に休憩を取ることが可能であるような具体的なものではなかったことが認められ、右の通勤職免、指示以外に、被告は、原告の病状の増悪を防止し健康の回復を図るため、業務の量的、質的な規制措置を講じたと認めるに足りる証拠はない。右の通勤職免、指示は原告に対する業務の量的、質的な規制措置として十分なものとは認めることはできない。 したがって、被告は原告の病状の増悪を防止し健康の回復を図るための、業務の量的、質的な規制措置を講ずべき義務を怠ったと認めざるを得ない。 |