全 情 報

ID番号 04759
事件名 慰謝料請求事件
いわゆる事件名 国鉄鷹取工場事件
争点
事案概要  国労組合員たる国鉄職員が、特別安全教育の受講を命ぜられ、それに従事したが、その一部に文鎮、メダル等のサンドペーパーによる磨き、ホースマット製作、自転車整備の作業に従事させられ精神的苦痛をこうむったとして損害賠償を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法623条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働義務の内容
裁判年月日 1989年5月25日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ワ) 664 
裁判結果 棄却
出典 労働判例541号18頁
審級関係 控訴審/05511/大阪高/平 3. 1.30/平成1年(ネ)1171号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働義務の内容〕
 三 右認定の特安実施の動機、目的、講議内容、受講者の選定方針、本件軽作業の実施目的、作業環境、作業管理体制及び作業内容等を総合すると、原告らに対する本件軽作業就業命令は必要性及び合理性を欠くものとはいえず、業務命令の裁量の範囲内にあって、これを著しく逸脱したものとも認められない。また、本件軽作業の内容等からして、これが憲法一八条で禁止される苦役に当たるものとは認められない。
 原告らは、特安受講者は国労組合員のみである旨主張するが、本工場の技能職員約一二六〇名のうち一一六〇名以上が国労組合員であることが認められるので(被告Y本人尋問の結果)、その比率からすると、特安の初期において国労組合員以外の者が受講者に指定されなかったことが不合理とはいえず、また、受講者の選定に当たって国労の役員を狙い打ちにしたこと、合否の判定が不公正であることを断定するに足りる資料もない。
 国鉄の分割・民営化の方針が打ち出されたころから、これに反対する国労と職場規律の是正を強調する国鉄との労使関係が極度に緊張し、本工場においても特安の実施前後に、特別非番日に関する労使協定、時間内入浴、分会事務所の撤去等の問題について労使間に紛争が発生していたことから(これらの事実は弁論の全趣旨によって認められる。)、原告らが特安について不信の念を抱くのも無理からぬところがないではないが、特安(本件軽作業も含む。)に関する限り、本件全証拠をもってしても不当労働行為の目的で実施されたものと認めることはできない。