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ID番号 04783
事件名 退職手当金等請求控訴事件
いわゆる事件名 沼津市教員事件
争点
事案概要  地方公務員に定年制が導入されたのに伴い市の条例で六〇歳定年が定められたが、市立高校の教諭であった者が昭和六〇年一月一日において年齢六〇歳を超えている者に対する退職手当の額につき、二五年以上勤務した者についても、市条例の定める定年退職者として扱われず自己都合退職者として取り扱われたことを不当として争った事例。
参照法条 地方公務員法13条
地方公務員法14条
地方公務員法24条1項
教育公務員特例法25条の5
労働基準法11条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1989年6月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (行コ) 95 
裁判結果 棄却(上告)
出典 行裁例集40巻7号847頁/タイムズ715号161頁
審級関係 一審/静岡地/昭63.12.22/昭和61年(行ウ)4号
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり、付加するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これをここに引用する。
 1 控訴人は、改正条例付則四項が国立学校の教育公務員に関する基準と異なる点において教育公務員特例法二五条の五に違反していると主張している。
 ところで、教育公務員特例法二五条の五第一項は、「公立学校の教育公務員の給与の種類及びその額は、当分の間、国立学校の教育公務員の給与の種類及び額を基準として定めるものとする。」と規定し、国家公務員については、定年制施行日において、既に六〇歳に達している者についても、一般の定年退職者と同様に取り扱うこととされている(国家公務員等退職手当法附則一九項参照)ことは明らかである。しかし、地方公務員の給与等の勤務条件は各地方公共団体の条例で定める(地方公務員法二四条六項)こととされているところ、教育公務員特例法の前記規定は、公立学校の給与等を定める指針を定めたものではあるが、定年制施行に伴う公立学校の教育公務員の退職金についての経過規定が国家公務員たる教育公務員と同一であることまで規定したものではないことは右規定の文言上明らかであり、かかる事項は、地方公共団体の議会が当該地方公共団体における従前の勧奨退職の慣行の存否、その状況など諸般の事情を考慮し、合理的な裁量に基づき決しうることであり、それに合理的根拠が存する以上、議会に委ねられた裁量の問題であり、違法となることはないものと解される。そして、被控訴人において、昭和六〇年一月一日において六〇歳を超える者の退職金に差異を設けたことに合理的理由があることは、前示(原判決理由二)のとおりであり、改正条例付則四項は、議会に委ねられた裁量の範囲内の問題であり、違法ではない。
 2 控訴人は、改正条例付則四項が教育公務員の給与を一般公務員と混同することは地方公務員法二四条一項の職務給の原則に違反し、教育公務員である控訴人の給与を教育公務員特例法二五条の五によらずに規定することは地方公務員法一三条に違反していると主張している。しかしながら、改正条例付則四項が合理的な根拠に基づくもので教育公務員特例法二五条の五に違反しない等前叙するところから、改正条例付則四項は地方公務員法二四条一項にも同法一三条にも違反しないというべきである。
 他に、改正付則四条が違憲ないし違法とすべき事情を認めるに足りる証拠はない。