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ID番号 04790
事件名 雇用関係存在確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 動労千葉事件
争点
事案概要  ジェット燃料の貨車輸送の期間延長に反対して線見訓練阻止行動、指名ストに参画し、あるいはそれを指導した動労千葉の執行委員に対する懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 公共企業体等労働関係法17条1項
公共企業体等労働関係法18条
労働基準法2章
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働義務の内容
裁判年月日 1989年7月17日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ネ) 3891 
裁判結果 棄却
出典 労働判例543号37頁
審級関係 一審/04055/千葉地/昭63.11.30/昭和56年(ワ)898号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 一 当裁判所も、控訴人らの本訴請求は理由がないので、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、次の二及び三の説示を付加するほか、以下のとおり補正した原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働義務の内容〕
 二 本件ジェット燃料輸送延長については労働協約が締結されていないので、動労千葉の組合員には本件ジェット燃料輸送に従事する義務がないという控訴人らの主張が理由のないことは、原判決理由説示のとおりであるが、なお敷衍するに、労働協約は個々の労働契約における労働条件を画一的に規制することを目的として労働組合と使用者又はその団体との間に締結されるものであり、これが締結された場合には、使用者及び組合員の双方はこれに拘束されるのは当然であるが、労働協約が締結されていない場合においても、労働者は個々の労働契約により合意された範囲内において使用者に対して労務供給の義務を負い、使用者はその労務の給付を請求しこれにつき指揮命令することができるのは当然である。そして労働者はその指揮命令が労働慣行に反し、あるいは社会通念上著しく不当であるなど、労使間の信義則に反するような特別の事情がない限り、これに応ずる義務があり、単に労働協約が締結されていない一事をもって、使用者の指揮命令を拒むことはできないものというべきである。
 本件においては、国鉄と動労千葉との間には、両者の数次にわたる団体交渉にも拘わらず、ジェット燃料輸送延長についての労働協約が締結されるには至らなかったのであるが、引用の原判決認定のように、本件ジェット燃料の輸送は、国鉄の通常の業務に属し特別の危険を伴うものでないことは明らかであり、したがって、その輸送業務は動労千葉所属の個々の組合員との間で締結された労働契約による就労義務の範囲内のものであることは論を待たないものというべきであるから、国鉄が動労千葉所属の組合員に対して右燃料輸送の業務に従事すべきことを命じたとしても労働契約の範囲を逸脱するものではなく、右命令が信義則に反するなど同命令を違法、不当とすべき特別の事情が存すると認めるに足りる証拠もない。この点に関する控訴人らの主張は採用の限りではない。