ID番号 | : | 04793 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三井生命保険事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 従業員が退職金を遺贈する旨の自筆証書遺言を残して死亡した場合において右退職金の遺贈を受けた者が退職金を請求した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法89条1項3号の2 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 死亡退職金 |
裁判年月日 | : | 1989年7月20日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和63年 (ワ) 11518 |
裁判結果 | : | 認容・確定 |
出典 | : | 労働民例集40巻4・5号458頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-死亡退職金〕 二 いずれも成立に争いのない甲第二号証ないし第一一号証によれば、Aの遺族は、その兄弟姉妹であるB、C、D、E、F、補助参加人及び原告の七名であることが認められる。 原告本人尋問の結果及びこれより真正に成立したものと認められる甲第一号証によれば、Aの作成した昭和六〇年一〇月一九日付自筆遺言証書には、「全財産を妹Xに遺贈する。」「その他預金、株券、債券、退職金一切の現金と債券をXに遺贈する。」旨記載のあることが認められる。 三 死亡退職金の受給権は、相続財産に属さず、受給権者である遺族の固有の権利である(最高裁判所昭和五五年一一月二七日判決民集三四巻八一五頁参照)から、これを目的とする遺贈は、その効力を生じるものではない。 しかしながら、遺言書においてある財産権を特定の者に「遺贈する」とされている場合その趣旨をどう解するかは、遺言者の意思解釈の問題である。 そうして、死亡退職金が相続財産ではなく、受取人の固有の権利であるというようなことは、一般人が容易に判断できることではないと解されるところ、A作成の右自筆遺言証書の記載及び原告本人尋問の結果によれば、Aは、自己の死亡の際支払われる退職金については、これを他の兄弟よりも仲の良かった原告に帰属させたいという意志を有していて、自筆遺言証書作成の際相続財産に属する他の財産権と並べ、退職金を原告に遺贈すると記載したものと認められる。 右認定によれば、Aの自筆遺言証書の右記載をもって、Aが、右死亡退職金につき遺言で受取人として原告を指定したものと認めるのが相当である。 |