全 情 報

ID番号 04798
事件名 賃金支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 杉乃井ホテル事件
争点
事案概要  ホテル会社従業員の争議行為、団結小屋の設置、ホテル前での座り込みに対して、ホテル会社がホテル建物を閉鎖して営業を休止してそれ以降の従業員の就労を拒否(ロックアウト)したのにつき従業員が右ロックアウトを違法として賃金を請求した事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法3章
民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ロックアウトと賃金請求権
裁判年月日 1989年12月1日
裁判所名 大分地
裁判形式 決定
事件番号 平成1年 (ヨ) 209 
平成1年 (ヨ) 211 
裁判結果 認容
出典 時報1341号154頁/タイムズ721号156頁/労働判例556号58頁
審級関係
評釈論文 籾山錚吾・ジュリスト982号113~116頁1991年7月1日
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-ロックアウトと賃金請求権〕
 ロックアウトは、労働者の争議行為によりかえって労使間の勢力の均衡が破れ、使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合に、衡平の原則に照らし、使用者においてこのような圧力を阻止し、労使間の勢力均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められる限りにおいて、正当性を認められるもので、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合の争議行為の態様、右により使用者の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地からみて労働者の争議行為に対する対抗手段として相当と認められる場合には、使用者の正当な争議行為と是認され、この場合には、使用者はロックアウト期間中の賃金支払義務を免れると解すべきところ、前記認定の事実によれば、ロックアウトに踏切った時点において債権者ら組合の勢力が債務者を圧倒し、その勢力の均衡が破れ、債務者が著しく不利な圧力を受けるような状況になっていたとは認めがたい。すなわち、ストライキ等それ自体直ちに違法な争議行為といえないし、顧客に迷惑をかけるにしても、それはストライキ等に随伴する通常の態様のものである限り使用者としてはそれは甘受せざるをえない。また、前記認定の事実並びに疎明資料によれば、組合側にも債務者役員等に対する行きすぎた個人攻撃や、集団による圧力、或はクラブAの閉鎖に関して債務者の経営権を一部侵害する行為のあったことが認められるが、債務者も、その目的の達成を急ぐ余り、これまでの労使慣行や協定を事前協議もなしに廃棄したり、組合との合意事項を遵守しなかったり、解雇処分を連発するなどしたことが組合の不要な反発をあおることとなり、組合の前示のような行為を招来したことは否定することができない。