全 情 報

ID番号 04799
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
いわゆる事件名 ネッスル日本霞ケ浦工場事件
争点
事案概要  組合内対立から組合が実質的に二つにわれた状態のもとで一方組合からの団交要求を拒否したり、右組合の組合員からのチェックオフ停止要求にもかかわらずチェックオフを継続して別組合に引き渡したことを不当労働行為とする労委の命令の取消を使用者が求めた事例。
参照法条 労働基準法24条1項
労働組合法16条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / チェックオフ
裁判年月日 1989年12月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行ウ) 67 
裁判結果 棄却
出典 時報1347号136頁/タイムズ733号102頁/労働判例553号32頁
審級関係
評釈論文 山川隆一・ジュリスト960号85~87頁1990年7月15日/和田肇・判例評論381〔判例時報1358〕230~234頁1990年11月1日
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-チェックオフ〕
 チェックオフは、各組合員と雇用主との関係においては支払委任たる性格を有するものであるから、組合員個人が雇用主に対してチェックオフの中止を申し入れた場合には、当該組合員につき組合からチェックオフを求められたとしても、雇用主は、特段の事情がない限り、右申入れに従いチェックオフを中止しなければならないものと解すべきである。これを本件についてみるに、右のとおり、同年九月以降においては、原告は参加人支部に所属する組合員から旧支部との協定に基づくチェックオフの中止を求められていたのであるから、仮に訴外支部との間で右協定の効力が存続しており、参加人支部の組合員が訴外支部の組合員たる資格を喪失したか否かが不明であったとしても(右協定の効力が消滅し、又は右組合員たる資格がなかったとすれば、チェックオフを中止すべきであったことは、前記事実に照らして明らかである。)、特段の事情が認められない限り、原告が右組合員についてチェックオフを継続することは許されなかったものというべきである。そして、右特段の事情については、その主張立証がなく、かえって前記認定の事実によれば、チェックオフを継続すべきでなかった事情を認めることができる。したがって、原告は、同日以降においては、旧支部とのチェックオフ協定の効力が訴外支部又は参加人支部のいずれとの間に存続していたか、また、参加人支部の組合員が訴外支部の組合員資格を有したかどうかを確認するまでもなく、右組合員の申入れに従い、チェックオフを中止すべきであったものといわざるを得ない。それにもかかわらず、原告は、参加人支部所属の組合員についてチェックオフを継続してチェックオフに係る金員を訴外支部に交付し、その結果右組合員をして別途組合費を徴収され、経済的損失を蒙ることを余儀なくさせたものである。このような措置は、参加人支部所属の組合員に対する不利益取扱い(労働組合法七条一号)に該当するとともに、参加人組合及び参加人支部の存在を否定し、これらに対し経済的打撃を与えてその弱体化を図ろうとするものであるといわざるを得ず、労働組合に対する支配介入(同条三号)にも該当するものというべきである。