ID番号 | : | 04804 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三井倉庫港運事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | ユニオン・ショップ協定締結組合から脱退して他の組合に加入した者に対してなされた右ユニオン・ショップ協定に基づく解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法20条 労働基準法89条1項3号 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / ユニオンショップ協定と解雇 |
裁判年月日 | : | 1989年12月14日 |
裁判所名 | : | 最高一小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和60年 (オ) 386 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 民集43巻12号2051頁/時報1336号40頁/タイムズ717号79頁/労働判例552号6頁/労経速報1381号3頁/裁判所時報1017号8頁/金融商事839号32頁 |
審級関係 | : | 控訴審/大阪高/昭59.12.24/昭和59年(ネ)628号 |
評釈論文 | : | ・手形研究35巻8号10~11頁1991年7月/奥山明良・判例評論383〔判例時報1364〕230~233頁1991年1月1日/古川陽二・平成元年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊957〕218~220頁1990年6月/高橋利文・ジュリスト953号98~99頁1990年4月1日/高橋利文・法曹時報43巻2号247~264頁1991年2月/砂山克彦・日本労働法学会誌76号116~123頁1990年10月/砂山克彦・法律のひろば43巻5号75~80頁1990年5月/小畑史子・ジュリスト966号104~106頁 |
判決理由 | : | 〔解雇-ユニオンショップ協定と解雇〕 ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるが、他方、労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合(以下「締結組合」という。)の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法九〇条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法二八条参照)。そうすると、使用者が、ユニオン・ショップ協定に基づき、このような労働者に対してした解雇は、同協定に基づく解雇義務が生じていないのにされたものであるから、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、解雇権の濫用として無効であるといわざるを得ない(最高裁昭和四三年(オ)第四九九号同五〇年四月二五日第二小法廷判決・民集二九巻四号四五六頁参照)。 本件についてこれをみるに、原審が適法に確定したところによると、(1) 上告会社は、参加人組合との間に「上告会社に所属する海上コンテナトレーラー運転手は、双方が協議して認めた者を除き、すべて参加人組合の組合員でなければならない。上告会社は、上告会社に所属する海上コンテナトレーラー運転手で、参加人組合に加入しない者及び参加人組合を除名された者を解雇する。」との本件ユニオン・ショップ協定を締結していた、(2) 被上告人らは上告会社に勤務する海上コンテナトレーラー運転手であったが、昭和五八年二月二一日午前八時半ころ、参加人組合に対して脱退届を提出して同組合を脱退し、即刻訴外全日本運輸一般労働組合神戸支部に加入し、その旨を同日午前九時一〇分ころ上告会社に通告した、(3) 参加人組合は、同日、上告会社に対し本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇を要求し、上告会社は、同日午後六時ころ本件ユニオン・ショップ協定に基づき被上告人らを解雇した、というのであり、参加人組合を脱退して訴外組合に加入した被上告人らについては、本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務が生ずるものでないことは、前記説示に照らし、明らかというべきである。そうすると、上告会社が、本件ユニオン・ショップ協定に基づき、被上告人らに対してした本件各解雇は、右協定による上告会社の解雇義務が生じていないときにされたものであり、本件において他にその合理性を裏付ける特段の事由を認めることはできないから、結局、本件各解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、解雇権の濫用として無効であるといわなければならない。以上と同旨の見解に立って、本件各解雇が解雇権の濫用であって無効であるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。 |