ID番号 | : | 04813 |
事件名 | : | 労働契約関係存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本鋼管事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | ユニオン・ショップ協定を締結していた組合を脱退し他組合に加入した者に対して行なわれたユニオン・ショップ協定に基づく解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働組合法16条 労働組合法7条1項但書 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / ユニオンショップ協定と解雇 |
裁判年月日 | : | 1989年12月21日 |
裁判所名 | : | 最高一小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和62年 (オ) 515 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報1340号135頁/タイムズ721号129頁/労働判例553号6頁/労経速報1381号13頁 |
審級関係 | : | 控訴審/東京高/昭61.12.17/昭和59年(ネ)1336号 |
評釈論文 | : | 砂山克彦・日本労働法学会誌76号116~123頁1990年10月/西谷敏・民商法雑誌103巻2号292~296頁1990年11月/赤西芳文・平成2年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊762〕368~369頁1991年9月/野間賢・季刊労働法155号180~181頁1990年5月 |
判決理由 | : | 〔解雇-ユニオンショップ協定と解雇〕 ユニオン・ショップ協定のうち、同協定締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び右締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法九〇条の規定により無効と解すべきであり、したがって、使用者が、ユニオン・ショップ協定に基づき、このような労働者に対してした解雇は、同協定に基づく解雇義務が生じていないのにされたものであるから、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、解雇権の濫用として無効というべきである。 〔中略〕 原審の適法に確定したところによれば、(1) 上告会社は上告補助参加人組合(以下「参加人組合」という。)との間において、同社は同組合から除名された従業員を解雇する旨の本件ユニオン・ショップ協定を締結していた、(2) 参加人組合の規約には、組合員が同組合を脱退するには所定の脱退届を提出して支部執行委員会及び中央執行委員会の承認を得なければならない旨の規定がある、(3) 被上告人らは上告会社に勤務する従業員であり、参加人組合の組合員であったが、同組合の方針が自己の考えと相容れないとして、昭和五四年二月二八日、それぞれ総評全日本造船労働組合及び同組合日本鋼管鶴見造船分会(以下「訴外各組合」という。)に加入し、参加人組合の各所属支部宛に同組合から脱退する旨の脱退届を内容証明郵便で送付して提出した、(4) 参加人組合制裁委員会は同年三月六日、被上告人らにつき除名相当との裁定を下し、同組合はこの裁定を受けて、同月一〇日の臨時組合大会において被上告人らに対する除名処分を可決した、(5) 参加人組合は同月二七日付けで上告会社に対し、本件ユニオン・ショップ協定に基づき被上告人らの解雇を申し入れ、上告会社は同日被上告人らを解雇した、というのである。右事実関係の下において、被上告人らが、脱退を制約する組合規約の規定にかかわらず、有効に参加人組合を脱退したものというべきであるとした原審の判断は是認することができ、同組合を脱退して訴外各組合に加入した被上告人らについては、本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務が生ずるものでないことは、前記説示に照らして明らかというべきである。そうすると、上告会社が、本件ユニオン・ショップ協定に基づき、被上告人らに対してした本件各解雇は、同協定による上告会社の解雇義務が生じていないときにされたものというべきであり、また、本件において他に本件各解雇の合理性を裏付ける特段の事由を認めることはできないから、結局、本件各解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、解雇権の濫用として無効であるといわなければならない。 |