ID番号 | : | 04822 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 名城大学事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 私立大学教授の懲戒解雇につき、学則の「教授、助教授、講師および助手の進退に関する事項は教授会で審議決定する」旨の規定を経ていないとして、右解雇が無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続 |
裁判年月日 | : | 1961年2月13日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和35年 (ワ) 123 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集12巻1号57頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕 被告法人所定のY大学学則第一〇条には教授、助教授、講師及び助手の進退に関する事項は教授会で審議決定する旨の規定が置かれていること、それにも拘らず原告の右懲戒解雇に当つて教授会の審議決定が何らなされていないことは、被告の自認するところである。 右規定によれば「進退」につき何らの制限を加えていないのであるから、教授らの任免、昇進等全てその地位の取得、喪失、変動を生ぜしめる一切の行為につき、その事由、原因、動機の如何を問わず、すべて教授会の議を経ることが要求されているものと解すべきである。尤も被告法人においてはその意思決定機関として理事会が存在しているのであるから、教授会が免職決定権を有するものと解すべきではなく、教授会はたゞ免職の可否のみを審議決定し、之に基き理事会が免職を決定し、その意思表示をなすことになると考えられる。そして理事会は右の事項に限つては教授会の審議決定と相反することを得ず、その内容に拘束されるものと解するのが相当である。蓋し憲法及び教育基本法に謂う「学問の自由」とはその本来の目的たる学問的研究、活動の自由を最大限に保証するため、その最高の場である大学に対し信条、研究成果等に基く外部(そのうちには大学経営者、或いは任免権を有する理事会を含む)からの指示、圧迫、強制等を排除し、大学内における学問研究の従事者に対し最大限の自主性を与え、その地位を強く保障しなければならないからである。これによつて大学の自治の原理が導き出され、学問、研究、教授の自由が維持されるのであつて被告法人においても学則として右の自由の表現の一態様をその第一〇条に表明したものであると考えられ、かく解してこそ理事会の恣意を排除し、教授等の地位を充分に保障できることになるのである。 とすれば被告の原告解雇の手続には究極において憲法上の要請でもある学問の自由の保障としての学則に違反する瑕疵があり、これは前示の如く極めて重要なものであつて学問の自由の侵害ともなり得るものであるから結局解雇の意思表示を無効ならしめるものと言わなければならない。被告はこの点につき後の教授会で審議決定を為すべく手続中である旨主張するけれども右審議決定が為されたことを認めるに足る証拠は何もないから、この主張を採用することはできない。 |