ID番号 | : | 04824 |
事件名 | : | 雇用契約存在確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 弘南バス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「会社は組合員の人事異動については、事前に組合に内示し、組合の意見を尊重して行なう」旨の協約条項には、懲戒解雇も含まれ、手続違反の解雇は無効とされた事例。 会社の内部紛争等に関する新聞への投書が会社の信用体面を毀損したとしてなされた懲戒解雇につき、情状の判定を誤ったものとして無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続 |
裁判年月日 | : | 1961年2月15日 |
裁判所名 | : | 青森地弘前支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和35年 (ワ) 91 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集12巻1号69頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 山本吉人・季刊労働法42号60頁/保原喜志夫・ジュリスト260号81頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕 そこで以上の点と労働者の地位の強化を期するため締結された労働協約所定の本解雇協議条項に基く協議手続について考えるに、それは会社および組合の双方が信義則に基いて意見を交換しつつ、慎重に協議すべき趣旨であつて、このような労働契約関係の解消という労働者の待遇について、最も重要かつ切実な事項に関連した、いわゆる規範的効力を認めるべき解雇協議条項所定の協約手続を経ないでされた解雇処分は、強行的規定たる手続に違反したことにより無効とする意味で規定されたものと解するのを相当とする。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕 そこで原告の所為について考えてみるに、成立に争いのない甲第二十六号証、同第二十七号証、並びに原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、原告は昭和三十年四月会社に雇傭されて以来車掌として同会社弘前営業所に勤務し、翌三十一年六月二日には、会社のため不正乗車を発見してその熱意と努力を表彰され、続いて同三十三年四月二十一日には早くも正班長を命ぜられており、今日までその素行と勤務状態については別段批判されるべき点もなかつたこと、その後同三十四年六月組合執行委員となり、次いで同年七月一日組合教宣部長となつたが、本件投書当時は会社と争議中で、その内容は殆ど争議に関する事項に属するものであり、たまたま組合の教宣部長として強力に教宣活動を遂行すべき地位にあつて活発に組合活動を展開していた際、組合に対する無理解不利益ともいうべき一公務員名義の投書が新聞に掲載発表されたので、原告はその職責上からも速やかに反対意見を表明してその責務を果すべき必要に迫まられた。そこで原告は対会社関係その他について広く顧慮することのないまま、今次争議並びに組合に対する一般の誤解を解き、かつ右公務員に対して回答し、あわせて組合の主張と立場を明確にする趣旨で筆をとり、勢の赴くまま、組合教宣部長の肩書を付した一方的主張ともみられる「組合から答えるAバスのスト」と題した投書文を起稿し、組合書記長の査閲をえてB日報に投稿して発表し、これについて会社から顛末書の提出を命ぜられながらこれに応ぜず自己の行為に一点の非をも認めようとしない態度に出たことが認められ本件の全証拠に徴するも、また右各認定を左右するに足りない。そうすると前顕諸事情に照らしても、必らずしも悪質重大とはいい難い原告の本件投書行為を捉えて全く情状酌量の余地もないとして、殆ど即時に、労働者たる原告にとつて極刑ともいうべき解雇処分に付したことは、就業規則の正当な適用を欠くものとして無効といわざるをえない。 |