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ID番号 04826
事件名 家屋明渡請求及び解雇無効確認請求反訴控訴事件
いわゆる事件名 三井鉱山事件
争点
事案概要  社宅の使用関係につき、従業員がその在職期間中占有居住することのできる使用貸借契約関係であるとして、被解雇者に社宅の明渡しが命じられた事例。
 石炭の採掘販売業がマッカーサー書簡にいう重要産業にあたるとして、右書簡にもとづく解雇が有効とされた事例。
参照法条 日本国憲法14条
労働基準法3条
民法593条
民法597条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
寄宿舎・社宅(民事) / 社宅の使用関係
裁判年月日 1961年3月10日
裁判所名 札幌高
裁判形式 判決
事件番号 昭和30年 (ネ) 257 
裁判結果 控訴認容,反訴請求棄却
出典 労働民例集12巻2号137頁/時報254号12頁/タイムズ118号94頁
審級関係
評釈論文 神田博司・佐々木亮二・法学新報68巻12号58頁/瀬元美知男・ジュリスト284号130頁
判決理由 〔寄宿舎・社宅-社宅の使用関係〕
 二 そこでまず本件家屋の貸借関係について判断する。
 原審証人Aの証言(第二回)によつて成立の認められる甲第五号証と右証言を総合すれば、本件家屋は、控訴人の福利施設の一環として、会社の本採用の従業員のうち、成年男子で妻子または扶養家族のあるものについて、社宅として従業員である間これを無償で貸与し、家屋の維持費にも不足の前示金額を畳修理料あるいは電灯料名義で借主から徴収しており、借主が退職または死亡によつて、貸与資格を失つたときは、特別の事情のない限り、その家族もともに即時家屋を返還する約であつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。
 以上認定の事実と前示争いのない事実とからすれば、本件家屋の使用契約関係は、借主から支払われる金員が家屋使用の対価として支払われるものとは到底認められない額でもあるしするので、家屋の賃貸借契約関係と認めることはできず、従業員が原則としてその在職期間中占有居住することのできる使用貸借契約関係とみるほかはない。
〔労基法の基本原則-均等待遇-信条と均等待遇(レッドパージなど)〕
 そうして、連合国最高司令官の前示声明、書簡等が、公共的報道機関についてのみならず、その他の重要産業についてもまた共産主義者またはその支持者を排除すべきことを要請した指示であり、日本の国家機関および国民が連合国最高司令官の発する一切の命令指示に誠実かつ迅速に服従する義務を有し、従つて、日本の法令は右の指示に牴触する限度においてその適用を排除されるから、連合国最高司令官の指示に基いて重要産業の経営者はその従業員を解雇することができるし、また解雇しなければならなかつたものであつて、その解雇は法律上の効力を有するものと認めなければならないことは、最高裁判所の判例とするところである(昭和二七年四月二日、昭和三五年四月一八日各最高裁判所大法廷決定参照)。また控訴人の営む石炭の採掘、販売業が、右にいわゆる重要産業に該当することは、その事業の性質、規模等からこれを認めるほかはないから、被控訴人に対する控訴人の本件解雇の意思表示は、他の点の判断をまつまでもなく、有効と認めざるを得ないのである。