全 情 報

ID番号 04828
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 福岡玉屋事件
争点
事案概要  公職選挙法違反等による有罪確定を理由とする懲戒解雇につき、その犯罪により企業秩序が乱され、あるいは乱されるおそれがあったか否かはさておき、事後の就業が不適当でありかつ企業内から排除しなければならない程度に悪質であったとはいえないとして、右解雇が無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 有罪判決
裁判年月日 1961年4月8日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ヨ) 363 
裁判結果 認容
出典 労働民例集12巻2号187頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-有罪判決〕
 就業規則第八五条第一二号には「その他前各号に準ずる行為のあつたとき」と規定されている。本件に於いて、右規定の前各号に準ずる行為というのは、同規則第八五条第一号乃至第一一号の規定に照らすと、本件公職選挙法違反によつて有罪の確定判決を受けたことを以つて第一〇号に準ずる行為のあつたときとしているものと解せられる。
 従つて本件において第一二号の趣旨は、刑法以外に規定する犯罪によつて有罪の確定判決をうけ、事後の就業が不適当と認められたときと解すべく、さらにその規定の趣旨は第二の一に述べたとおりに解すべきである。
 然るときは申請人の公職選挙法違反の行為の罪質ならびにその情状が前記認定のとおりであることを考えると、右行為によつて、被申請人の企業経営の秩序を侵害し、業務の正常な運営が阻害されたか否かはさておき、未だそれによつて事後の就業が不適当でありかつ申請人をその企業内から排除しなければならない程度に悪質なものとは認め難い。
 以上説示の如く、被申請人が申請人を懲戒解雇に付したのは、その就業規則の適用を誤つた違法なもので、それは無効といわなければならない。(なお本件解雇事由に対する就業規則の該当条項として前認定の条項に並べて第三条、第一四条第二号が挙げられているのであるが、それは単に補充的に掲げられているに過ぎないものと解する)。従つて申請人は被申請人との間に未だ雇傭関係が継続しているというべきである。