ID番号 | : | 04833 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 敷島紡績事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 未成年者の退職願につき、その兄による強迫にもとづくものとして取消しが認められた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法58条2項 民法96条 |
体系項目 | : | 年少者(民事) / 未成年者の労働契約 退職 / 退職願 / 退職願と強迫 |
裁判年月日 | : | 1961年5月2日 |
裁判所名 | : | 神戸地姫路支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和36年 (ヨ) 16 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集12巻3号273頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 萩沢清彦・労働法学研究会報493号1頁 |
判決理由 | : | 〔年少者-未成年者の労働契約〕 〔退職-退職願-退職願と強迫〕 右認定事実を以て被申請人は申請人を解雇したものと解することはできないし、その他右認定事実の外に被申請人が申請人を解雇したことを認むべき疏明がないから申請人の解雇を事由とする本件申請は採用しない。又右認定事実によれば、被申請人は申請人が民青に加盟し、サークル活動をしていることを嫌つて同人の退職を希望し色々の人を通じて同人の退職の説得に努めたものであることも推認し得るのであるが、申請人が前示退職の意思表示をなすに当り全く意思の自由を喪失する程度の圧迫を受けたものとも解せられない。他にこれを認めるに足る疏明はないから申請人の退職の申込の意思表示が無効であることを前提としては本件申請を許容するに由ない。然し前示認定の諸事情の下に申請人の兄Aのなした説得は通常の説得の程度を著しく逸脱するものであるばかりでなく申請人が当時未だ年齢一八才の女工であること、父は既に死亡しAが唯一人の兄であること等に鑑みれば、申請人が兄Aの前示言動に因り恐怖を抱きこれに基いて本件退職の決意をなしたものと認めるのが相当である。乙第二号ないし第一三号証によつては右認定を動かすに足りない。従つて本件退職の申入は兄Aの強迫によりなしたものとしてこれを取消し得るものと解すべきところ、申請人が昭和三五年一二月二日に舎監のB氏及び人事係長のC氏に対し右取消の意思表示をしたことは前示甲第三号証及び証人Dの証言及び申請人本人尋問の結果を綜合して一応これを認め得る。右認定に反する甲第三号証の記載及び証人B及び同Cの各証言は信用しない。従つて申請人の前示退職申入の意思表示はこれによつて有効に取消されたものというべく、従つて申請人と被申請人との雇傭契約は退職の意思表示の撤回を理由とする本件申請の当否につき判断するまでもなく有効に存続するものというべく、申請人は被申請人の従業員たる仮の地位を有するものというべきである。 |