ID番号 | : | 04836 |
事件名 | : | 貸付金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 浅草信用金庫事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「不都合な行為により退職した者に対しては、退職給与金を支給しない」との退職金規定につき、退職事実が死亡という事実である場合は、死亡という退職事由の発生によって、すでに退職金を支払うべき債務は具体化しているとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3の2号 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の周知 |
裁判年月日 | : | 1961年5月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和35年 (レ) 254 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 下級民集12巻5号1205頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔就業規則-就業規則の周知〕 控訴人は、退職給与金支給規定第四条の適用を生前退職の場合に限りみとめることは、普通退職並びに不都合な行為による生前退職の場合に比べて権衡を失し、正義に反することになる、と主張するのでこの点について考える。右退職給与金支給規定第四条には、「不都合な行為により退職したものに対しては、退職給与金を支給しない。」と定められており、その文理解釈上、退職事由が、「不都合な行為があつた」という場合を指すものとみるべきであつて退職事由が死亡という事実である場合は、死亡という退職事由の発生によつて、すでに退職金を支払うべき債務は具体化しているのとあるから、その後に至り、生前の不都合な行為が発覚したからと云つて、すでに具体化した退職金請求権に影響を及ぼすものとは考えられない。退職金については、使用者において、就業規則等により自由にその性格内容を定めることができるのであるから、不都合な行為がありながら、懲戒解雇前に死亡した場合について特別な取扱いを規定することができる以上、特別な定めのない控訴人金庫の右退職給与金支給規定において、死亡によつて退職した場合には、不都合な行為があつても退職金を支給しなければならないと解しても、正義に反するものということはできない。このことは、死亡退職の場合に限らず、生前退職の場合であつても、退職事由が「不都合な行為」にあるものでなければ、かりに退職前に不都合な行為をしていたとしても、退職金を支給しなければならないことを考えれば、おのずと明かである。 |