全 情 報

ID番号 04847
事件名 雇用契約存在確認等請求事件
いわゆる事件名 駐留軍事件
争点
事案概要  駐留軍労務者に対する保安上の理由による出勤停止および保安解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 保安解雇
裁判年月日 1961年12月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和32年 (ワ) 10315 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集12巻6号1097頁/タイムズ127号96頁/訟務月報8巻2号263頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-保安解雇〕
 上来判示したところに基いて考察するに、原告は、フインカム支部の執行委員としてずつと組合運動に従事して来たものであつて、たとえその一々の行動が遂一具体的に軍に知られていたとまではいえないにせよ、少くとも原告の職場における軍側要員が原告の組合運動について全然覚知するところがなかつたものとはとうてい思われないけれども、軍において原告の組合運動に着目して原告を職場外に放逐すべくその機会を窺つていたというほどにかねてから原告を嫌悪していたものとは認められないし、特に原告が被告から出勤停止処分を受けた時期に接着して展開された、NCOメスにおけるフインカム支部の組織拡大活動、有給休暇出勤停止反対闘争及びコンメスからNCOメスに配置転換された従業員の旧職場復帰処置に対する撤回要求運動などのためにする原告の行動なり動静がことさら軍を刺戟しその注目をひいたとは、原告のその間に果した役割等から推してたやすくは肯定されないところである。しかも一方において、本件処分の理由は、先にも判示したとおり原告が附属協定第一条a項第三号所定の保安基準に該当する者であるというにあつたことが当事者間に争いないところ、その具体的な事実については本訴において被告から明示されるところがないけれども成立に争いのない乙第三号証の二及び証人Aの証言によれば、昭和三一年四月二三日軍から原告に附属協定所定の保安基準該当の事実が有るかどうかについて意見を求められて被告の行政機関である調達庁長官は、調査の結果により、原告はフインカム基地において組織されている破壊的団体の下部単位組織の長の地位にあつた者と密接に連けいし、当該団体の構成員と同程度の活動をしており、附属協定第一条a項第三号に該当するものと思料される旨の回答を同年六月二八日にしたところ、折返し軍から原告を解雇すべき旨の要求があつたので、被告より原告に対しその意思表示がなされたことが認められる。叙上のような諸般の事情にかんがみるときは、被告の原告に対する本件処分は、専ら原告に附属協定所定の保安基準該当の事実があることを理由としてなされたものと解さざるを得ないのである。
 さすれば本件処分をもつて労働組合法第七条第一号に掲げる不当労働行為にあたる無効のものであるという原告の主張は失当であるといわなければならない。