ID番号 | : | 04866 |
事件名 | : | 雇用関係存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本国有鉄道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 町議会議員に当選した国鉄職員につき、国鉄総裁の兼職承認を得ておらず、国鉄職員たる地位を失うとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法7条 日本国有鉄道法26条2項 公職選挙法103条1項 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 公民権行使 / 公民権行使と休職・解雇 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 信義則上の義務・忠実義務 |
裁判年月日 | : | 1990年2月13日 |
裁判所名 | : | 広島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和58年 (ワ) 381 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例557号11頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-信義則上の義務・忠実義務〕 (二) ところで、前記3のとおり、国鉄職員が市町村議会議員に当選した場合にも公選法一〇三条一項の適用があると解すべきであるところ、日鉄法二六条二項及び公選法一〇三条一項の文言に即して解釈すれば、国鉄職員は、当選の告知を受けた時点において、事前に当選を条件とする国鉄総裁による兼職の承認を得ているものでない限りは、日鉄法二六条二項の規定により兼職を禁止された、公選法一〇三条一項にいう「当該選挙にかかる議員(略)と兼ねることができない職に在る者」に該当するものであるから、同項の規定によって、当選の告知を受けることにより、その日に自動的に国鉄職員たる地位を失うものと解すべきである。 〔労基法の基本原則-公民権行使-公民権行使と休職・解雇〕 (1) 労基法七条の趣旨について 原告らは、自動失職説は労基法七条の趣旨と抵触するものである旨主張する。 しかしながら、労基法七条は、労働者が公民権を行使するために必要な時間について使用者に職務専念義務を免除すべき旨を命じているにとどまり、同条が使用者に公民権の行使に伴う業務阻害を受忍すべき義務を課しているのは、選挙権の行使又はこれに類するような一時的な公務の遂行から通常生ずる程度の業務阻害についてであると解すべきであるから、それ以上に市町村議会の議員として相当な活動をすることが予想される場合には、国鉄総裁が合理的な裁量判断により兼職を承認しないとしても、そのことが、直ちに労基法七条に違反するものではない。 もっとも、国鉄における労使関係においても憲法及び労基法の趣旨は尊重されるべきであり、国鉄総裁が日鉄法二六条二項但書により国鉄職員と市町村議会議員との兼職を承認するにあたっても、国民の参政権を保障する趣旨で設けられた同法七条の規定の趣旨を尊重しつつ判断すべきことはいうまでもないが、基幹的交通機関を提供するという国鉄の業務の公共性にてらせば、日鉄法二六条二項を、その明文に即して、原則として兼職は禁止され、国鉄総裁の承認を条件として右禁止が解除されるものと解することが、労基法七条の趣旨に反し国鉄職員の参政権を不当に侵害するものということはできない。 |