ID番号 | : | 04870 |
事件名 | : | 地位保全事件/金員支払仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 三洋電機事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一年間の契約を数回更新した定勤社員契約につき、実質において期間の定めのない労働契約と異ならない状態となっており、その更新拒否には解雇法理が適用され、業績不振を理由とする雇止めにあたってもそれを回避する努力を尽くすべきであったとして、雇止めが無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 民法628条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1990年2月20日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和62年 (ヨ) 1281 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働判例558号45頁/労経速報1385号19頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 寺沢勝子、出田健一、田窪五朗・労働法律旬報1236号4~8頁1990年3月25日/小俣勝治・季刊労働法156号144~145頁1990年8月/道幸哲也・法学セミナー35巻11号139頁1990年11月 |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 右一応認める事実によれば、定勤社員は被申請人において臨時従業員の一として位置付けられており、処遇の面でも正社員とは明確な差異があるうえ、毎年契約書を作成して契約を更新するという手続が履践されていたのであるから、定勤社員契約は一年という期間の定めのある労働契約にほかならないというべきであり、これが当初から期間の定めのない労働契約であったかとか、反復更新を繰り返すことにより期間の定めのない労働契約に転化したとかの事実を一応認めるに足りる疎明資料はない。 しかしながら、他方、定勤社員は、臨時社員として二か月の期間の定めのある労働契約を連続して少なくとも一一回更新し、二年以上継続勤務してはじめてその資格を得られるものであること、しかも定勤社員になれば契約期間が一挙にそれまでの六倍になること、定勤社員になる際には簡易とはいえ適性検査を受けなければならないのに、その後の契約更新の際は単に書面を作成すれば足りること、申請人らが勤務する住道地区の事業部において、従来定勤社員が雇止めされた事例はないこと、申請人らはいずれも臨時社員として二年以上継続勤務したうえ、決して短いとはいえない期間の契約を一回以上更新した経験を有すること、申請人らの従事していた作業が単純反復作業であるとしても、商品製造という事業部本来の目的のためには直接必要不可欠のものであったことを考えると、定勤社員契約は、その実質において期間の定めのない労働契約と異ならない状態で存在していたものと認めることができ、本件雇止めの効力を判断するに当たっては、解雇に関する法理を類推すべきである。 〔中略〕 右一応認めた被申請人住道四事業部の業績悪化の状況、その原因となる外的内的双方の事情を考えると、被申請人には事業部門の縮小あるいは人員の削減をすべきやむをえない経営上の必要があったものと認めることができる。そして、人員整理を行う場合、前記認定のように採用形態や処遇に差異のあることに照らし、まず申請人ら定勤社員を第一順位とすることにも、合理的な理由があるといえる。しかしながら、前示のように、定勤社員契約は実質的に期間の定めのない契約であり本件雇止めの効力を判断するに当たっては解雇に関する法理を類推すべきであるとの立場に立つ限り、そのような場合でも、使用者としては解雇(雇止め)回避のための努力を尽くすべきであると解されるところ、一6において一応認めた事実によれば、被申請人は、住道四事業部の業績悪化あるいは本件雇止め当時の営業赤字の発生にもかかわらず、企業全体としてはまだまだ余力を残していたと推認することができ、そうである以上、本件においては、たとえ定勤社員の雇止めをするとしても、ただ定勤社員であるというだけの理由で直ちに全員を雇止めの対象とすることまで正当化されるとは解し難く、まず削減すべき余剰人員を確定し、定勤社員の中で希望退職者を募集するなどの手段を尽くすべきであったというべきである。しかるところ、前示認定のように、被申請人は、休日振替、時間休業等の手段は採用したものの、定勤社員の雇止めにあたっては、希望退職者を募集することなど全く検討せず、余剰人員確定の努力をした形跡も何ら認められないのであり、そうすると、被申請人は、前記のような経営上の必要がありさえすれば定勤社員全員の雇止めは当然許されるものと考えて本件雇止めをしたとみるしかないが、かかる処置は、前示定勤社員契約の実質に照らしても、いわゆるパートタイマーに寛容な近時の社会通念に照らしても、合理性を欠くといわなければならない。 以上のとおり、本件雇止めは十分な回避努力を欠く点において合理的理由がなく、無効である。 |