全 情 報

ID番号 04879
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 大林組事件
争点
事案概要  就業規則の「従業員に就業に堪えない事由が生じた場合」にあてはまるとして解雇された者が該当事由がなく解雇は無効であるとして地位保全の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 就業規則所定の解雇事由の意義
裁判年月日 1950年4月22日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 決定
事件番号 昭和25年 (ヨ) 76 
裁判結果 認容
出典 労働民例集1巻4号613頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-就業規則所定の解雇事由の意義〕
 申請人等は被申請会社の従業員であつたが昭和二十四年十月十一日附で解雇された、そこで右解雇の当否につき一応判断してみるに、被申請会社の就業規則第五十三条には、
「従業員が次の各号の一に該当するときは、三十日前に予告するか、又は三十日分の平均賃金を支給して解職又は傭解する。但し天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となつた場合又は従業員の責に帰すべき事由に基いて解職又は解傭する場合においては、この限りでない。一、精神若しくは身体に故障があるか、又は虚弱老衰若しくは疾病のため就業ができないと認めるとき。二、前号に準ずるやむを得ない事由のあるとき。(以下略す)」。
と規定しており、その趣旨は必ずしも明瞭ではないが、この規定が労働基準法第二十条の法意を踏襲しながら特に第一、第二号の解雇事由を掲げていること(基準法の修正は労働者の有利にのみなされうる)に徴すれば、右規定但書所定の場合のほかは解雇事由を第一、二号に該当する場合(即ち従業員側に就業に堪え得ない事由が生じた場合)に限定する趣旨であると解釈する方が客観的に妥当であろう。
 もつとも被申請人は「労働協約第九条によれば従業員の解雇については組合と協議することになつていないから、ことさら就業規則で解雇事由を制限するのは無意味である。規則第五十三条は組合が同意を拒み得ない顕著な事由を例示したにすぎない。」と主張するけれども、右両個の規定が併存することはあながち無意味といえないし、又労働協約が失効した場合においては就業規則自体として客觀的な解釈が加えられるべきは勿論であろう。
 しかして、被申請会社の申請人等に対する本件解雇は、申請人等提出の各疏明資料によれば就業規則第五十三条所定のいずれの場合にも該当しないと思われるのであるから、右は同条に違反し無効であるといわねばならない。