ID番号 | : | 04894 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 科学研究所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 会社に雇い入れられるに際して大蔵省印刷庁に工員として勤務し行政機関職員定員法制定により行政整理に当たり希望退職した者がその経歴を秘匿して採用されたことが経歴詐称に当たるとして懲戒解雇された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 経歴詐称 |
裁判年月日 | : | 1950年8月19日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和25年 (ヨ) 2057 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集1巻4号625頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-経歴詐称〕 (二) 一般に前歴を偽つて入社することは、道義的に責むべき行為であるのみならず職場の規律ないし秩序を乱す行為として懲戒解雇に値するということが出来る。定員法により解職せられたものが、その事実を書いたのでは就職し難いということは、或る程度真実であり、それゆえ、家族を扶養しなければならない申請人Aが、就職したい一心から心ならずも職歴を詐つたことには同情さるべき点もあるが、このことをルーズに取扱い、或る程度の職歴詐称を許さなければならないとするならば、被申請人会社の紀綱を維持することは困難となるであろう。かかる観点からすれば、本件解雇は、実質的には懲戒解雇であり、且つ正当な事由に基くものであるということができる。 (三) 職歴詐称は、本件就業規則中に解雇基準として規定せられていないが、これと本件労働協約の条項とを綜合して考察すると、右就業規則が懲戒解雇を制限する趣旨のものでないことは明かである。 (四) 被申請人会社は、昭和二十五年五月四日申請人Aに解雇を内示したが、その後本件解雇につき、五月六日の申請人組合からの異議申立に基き、五月二十五日以降経営協議会を開き、被申請人会社は、「申請人Aに対する今回の措置は、採用の無効又は取消処分であり、又、職歴詐称は懲戒免職がたてまえであるが、本人将来を考慮して、円満退職の取扱をしてもよい。」と主張したのに対し、申請人組合は、「職歴詐称は良くないことであり何分の処分はやむを得ないが、解雇は酷に失する。」と主張して意見が対立し、六月十日まで再三協議したが意見が一致せず、遂に六月十四日、本件解雇をなすに至つたことが一応認められる。 かかる事実によれば、被申請人会社の主張はもつともであり、且つ十分審議を尽したということができるから、被申請人会社は、申請人組合の同意が得られないまま、有効に申請人Aを解雇することができるものというべきである。 (五) 本件懲戒解雇がやむを得ないものであり、且つ職歴詐称がその決定的原因と認められるから、不当労働行為の成立する余地はない。 |