全 情 報

ID番号 04911
事件名 未払手当金請求控訴事件
いわゆる事件名 林野庁職員(夏期、年末手当)事件
争点
事案概要  夏期、年末手当の支給に関する労働協約の締結日以降に、基準内給与、賃金が改訂された場合に、改訂後の給与、賃金が右夏期、年末手当の算定基礎として算入されるか否かが争われた事例。
参照法条 公共企業体等労働関係法8条
一般職の職員の給与等に関する法律19条の3
一般職の職員の給与等に関する法律19条の4
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 1990年5月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (行コ) 45 
裁判結果 棄却
出典 労働判例564号70頁
審級関係 一審/04735/東京地/平 1. 3.30/昭和58年(行ウ)81号
評釈論文
判決理由 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕
 給与法の適用のある一般職の国家公務員については、手当も含めて給与等は給与法の定めによるから、給与法の改正により遡って俸給が改定された場合に手当等も遡って改定するか否かは、国会が給与法改正の都度決すべきことである。ただ、給与法においては、期末手当等は職員が受けるべき俸給の額に一定の割合を乗じて得た額を基準にすると規定されている(同法一九条の三、一九条の四)ため、立法技術上、俸給が遡って改定され、期末手当等は遡って改定しない場合にはその旨の規定を必要とするに過ぎない。昭和五七年の給与法改正において、一般職の国家公務員について、俸給の改定を過去の期末手当等に影響させないこととし、その旨の規定が置かれたのは、このような立法技術上の制約によるものである。
 そして、公労法の適用のある職員に係る賃金等の労働条件に関する事項は、前示のとおり、第一次的には、労使間の交渉とこれに基づく労働協約によって決定されるべきことであるから、基準内給与・賃金が遡って改定された場合に過去の夏期及び期末手当を改定するか否かは、労使の交渉と、それに基づく協約によるべきものであり、右協約の解釈に当たっては、当該協約の文言のみでなく、協約に至った経過を考慮し、その合意の内容を理解すべきである(この決定方法について林野当局と全林野との間に一般的な合意が存したことを認めるに足りる証拠はない。)ところ、本件夏期及び年末手当の支給に関する協約はもちろんのこと、本件一部改正協約が、基準内給与・賃金が改定された場合に自動的に期末手当等の手当が遡って改定されることを定めたものではないことは、前示のとおりである以上、本件一部改正協約附則の文言が前示のとおりであることが、差額支給についての前示の判断を左右するものではない。
 また、昭和五七年度の国有林野事業特別会計において控訴人ら主張の予算措置がされていることは前示のとおりであるが、昭和四五年度から昭和五六年度に至るまで手当についても毎年遡って改定された前示の経緯に鑑みれば、右予算処置は予算決定時に予測された事態に対応したものとは認められるものの、これによって具体的な協約なくして夏期及び期末手当が遡って改定されることを意味するものではない。