全 情 報

ID番号 04917
事件名 処分取消等請求事件
いわゆる事件名 武蔵野市職員事件
争点
事案概要  市民部市民課市民係から水道部業務課収納係への転任処分を命じられた市職員が右処分を「不利益処分」に当たるとして処分取消を求めた事例。
参照法条 地方公務員法49条1項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1990年6月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行ウ) 53 
裁判結果 却下
出典 労働判例565号46頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 (一) 本件転任処分は、原告に対し、具体的に従事する職務及び勤務場所の異動をもたらしたが、被告市長によって任用された一般職の地方公務員としての身分や主事という職名及び給与そのものにはなんらの変動も生ぜしめていない。
 (二) 原告が本件転任処分以前に従事していた市民部市民課市民係の職務と、本件転任処分によって従事することとなった水道部業務課収納係の職務は、いずれも、いわゆるデスクワークを主とする事務職であって、両者の間に本質的な差異はなく、また、勤務時間も全く同じである。
 (三) 水道部業務課収納係のある水道部の庁舎は、市民部市民課市民係のある本庁舎とは別の場所に所在しているが、徒歩で六、七分、距離にして六〇〇メートル程しか離れておらず、原告は、本件転任処分に伴い、住居の移転を必要としなかったことはもちろん、通勤に要する時間も従前と殆ど変わっていない。
3 右認定事実に照らすと、本件転任処分は、いわゆる水平異動であって、原告の身分や職名、給与そのものになんらの変動を生じさせるものではなく、また、客観的、実際的見地からみても、原告の勤務場所、勤務内容に不利益を伴うものではないことが認められるから、本件転任処分は、他に特別の事情がない限り、地方公務員法四九条一項所定の「不利益な処分」には該当しないというべきである。
 〔中略〕
 地方公務員は、職務専念義務を負い(地方公務員法三五条)、勤務時間中に組合活動を行うことは許されないから、原告の主張が勤務時間中の組合活動に不都合を生じたという趣旨であれば、主張自体失当というほかはない。また、勤務時間外の組合活動についても、前記認定のとおり、水道部の庁舎と本庁舎とは、徒歩で六、七分、距離にして六〇〇メートル程しか離れていないのであるから、たとえ不都合が生じたとしても、それは転任処分によって通常生じる程度のものに留り、考慮に値するほどの不都合とは認め難い。
5 以上のとおりであって、本件転任処分は地方公務員法四九条一項所定の「不利益な処分」に該当しないから、原告は本件転任処分の取消を求める法律上の利益を欠くといわざるを得ず(最高裁昭和六一年一〇月二三日第一小法廷判決・裁判集民事一四九号五九頁参照)、したがって、原告の被告市長に対する訴えは、本件転任処分の違法性について立ち入って判断するまでもなく、不適法として却下を免れない。