全 情 報

ID番号 04920
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 日新工機事件
争点
事案概要  「移籍を拒否した者」との整理解雇基準に該当するとしてなされた整理解雇につきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法20条
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1990年6月25日
裁判所名 神戸地姫路支
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 122 
裁判結果 認容
出典 タイムズ746号152頁/労働判例565号35頁/労経速報1405号24頁
審級関係
評釈論文 萱谷一郎・労働法律旬報1243号15~21頁1990年7月10日
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕
 およそ企業が経営危機に瀕し人員整理を実施しなければ回生の見込みがないような場合、企業は従業員の人員整理を行い解雇をなしうることはいうまでもないが、しかし反面、これが無制限に容認されえないことも当然であって、その濫用は許さるべきでないところ、整理解雇が正当なものであって、解雇権の濫用にあたらないものといえるかどうかは、(一)企業が客観的に高度の経営危機にあり、人員整理の一環として解雇を行わなければ企業の維持存続が困難であったかどうか、(二)企業の側で整理解雇に先立ち労働者の解雇を回避するため、できうるかぎり経営上の手段を尽くしたかどうか、(三)整理解雇対象者の選定基準およびその運用が客観的合理性に欠けていなかったかどうか、(四)企業の側が整理解雇の必要性及び解雇対象者選定の基準等について従業員の側に十分説明し、協議を尽くしたかどうか等の諸事情を総合勘案して判断するのが相当である。
 〔中略〕
 右各認定のところ、すなわち、被告を含む自動車産業界の経営不振とこれに伴う被告の経営危機発生、経営危機回避のための人員整理の必要性並びに原告人選に至る経緯などの点からみると、被告の原告に対する本件整理解雇は、一応納得できるものがなくもないが、しかし、(後記4でさらに検討するとおり)被告主張の経営危機に伴う人員整理の回避措置及び原告に対する整理解雇の時機等の点に関しては、必ずしも納得しうる事実関係等を認め難いうえに、被告の経営危機の深刻度や人員整理の必要程度等についても、関係証拠を精査するときなお疑問が多々残り、結局、原告に対する本件解雇の客観的合理性は、にわかに認め難いところである。〔解雇-整理解雇-整理解雇基準〕
 以上認定説示のところをかれこれ総合勘案すると、当時、被告の経営悪化により人員整理の必要性があったとしても、被告抗弁の如き大規模な人員削減を敢行すべき必要性があったかについては疑問があるうえ、その人員整理計画前、被告が人員整理回避措置を講じたことは窺えないではないが、全くその徹底を欠き、経営上最大限の努力を尽したとは毛頭いい難いものがあるし、本件整理解雇基準の選定及びその具体的適用、とくに原告に対する人選手続等についても問題点が多く、客観的合理性に欠くるものがあるから、本件人員整理について被告の行った従業員等に対する説明及び協議の状況について判断するまでもなく、原告に対する本件解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効であって、原告の前記再抗弁は理由があるというべきである。