ID番号 | : | 04927 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | タケオ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 多数回にわたって上司の業務上の指示に従わなかったことを理由とする従業員の懲戒解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1990年7月27日 |
裁判所名 | : | 千葉地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和57年 (ワ) 665 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例566号6頁/労経速報1410号15頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕 (一) 被告会社が、原告に対し、被告会社主張のころ、Aの調査を命じたこと、原告がその報告書を提出したことは当事者間に争いがない。そして、(証拠略)原告が提出したAに関する調査報告書は、最低限調査すべき事項が調査、記載されていない不完全なものであったこと、そのため上司のBが三回にわたり原告に対して調査事項を具体的に書面で指示して再調査を命じたにも拘らず、原告は、Bが書いた指示事項に×印を付すという方法でその指示を拒絶し、再調査を行わなかったことが認められる。 (二) 被告会社が原告に対し、被告会社主張のころ、C株式会社の調査を命じたこと、原告がその報告書を提出したことは当事者間に争いがない。(証拠略)原告が提出したC株式会社に関する調査報告書は、最低限調査すべき事項が調査、記載されていない不完全なものであり、また調査員に義務付けられている調査済報告書の添付もなかったこと、そのためBが原告に対して、再調査事項を具体的に書面で指示して、再調査及び調査済報告書の添付を命じたにも拘らず、原告は、Bの書いた指示事項に×印を付してその指示を無視し、再調査及び調査済報告書の添付をしなかったことが認められる。 (三) 被告会社が原告に対し、被告会社主張のころ、D株式会社の調査を命じたこと、原告がその報告書を提出したことは当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない(証拠略)原告が提出したD株式会社に関する調査報告書は、最低限調査すべき事項が調査、記載されていない不完全なものであったこと、そのためBが原告に対して再調査事項を具体的に書面で指示して再調査を命じたにも拘らず、原告はBの指示を無視して再調査を行わなかったことが認められる。 (四) 被告会社が原告に対し、被告会社主張のころ、E株式会社の調査を命じたこと、原告がその報告書を提出したことは当事者間に争いがない。(証拠略)原告が提出したE株式会社に関する調査報告書は、最低限調査すべき事項が調査、記載されていない不完全なものであったこと、そのためBが原告に対して再調査事項を具体的に書面で指示して再調査を命じたにも拘らず、原告はBの指示を無視して再調査を行わなかったことが認められる。 (五) 被告会社が原告に対し、被告会社主張のころ、F株式会社の調査を命じたことは当事者間に争いがない。そして、「掲載不要」の部分を除くその余の部分は成立に争いがなく、「掲載不要」の部分は(人証略)により被告会社が作成したものと認められる(認拠略)によれば、被告らの主張一2の(五)のその余の事実が認められる。 (六) 被告会社が原告に対し、被告会社主張のころ、有限会社G、H株式会社、株式会社Iの各調査を命じた事実は当事者間に争いがない。(証拠略)、原告が提出した有限会社G、H株式会社及び株式会社Iに関する調査報告書は、最低限調査すべき事項を調査、記載されていない不完全なものであったこと、そのためBが原告に対して再調査事項を具体的に書面で指示して再調査を命じたにも拘らず、原告はBの指示を無視して再調査を行わなかったことが認められる。 (七) 成立に争いのない(証拠略)被告らの主張一2の(七)の事実が認められる。 〔中略〕 4 次に、原告の前記(一)ないし(七)の各所為が、就業規則七二条九号の「業務に関し諸規則、または上長の指示命令を守らないとき」に、前記(八)の事実が同条一〇号の「許可なしに会社の物品を持ち出したとき」にそれぞれ該当し、懲戒事由に当たるか否かについて検討する。 (一) 被告会社が、企業の信用調査業務、信用に関する情報の収集、分析、提供を目的としている会社であることは当事者間に争いがないところ、そのような会社においては、調査員の提出する報告書は、会社にとって極めて重要な書類であり、また雇用されている調査員にとって、このような報告書を作成することは、会社に対する最も基本的な義務であるということができる。 (二) ところが、前記3の(一)ないし(七)に認定のとおり、原告は再三にわたり業務上の命令を拒絶したのである。しかも、(証拠略)、昭和四九年ころから、原告の行った調査に欠陥が目立つようになり、これに対し、原告の上司であったBが書面で再調査の指示を行ったところ、前記認定のとおり指示部分に×印を付すという方法で再調査を拒絶する態度を示したものであって、原告のこのような所為は、職務に関する著しい命令違反があると評されても止むを得ないところである。 (三) また、被告会社の所有する調査資料は、その内容が秘密を要するものであるばかりでなく、被告会社の前記営業目的からすれば、同会社にとって、重要な財産であるから、その取扱については細心の注意を払わなければならないものである。したがって、前記認定のとおり、原告がJ株式会社の調査資料を返還しなかった所為は重大である。 (四) そうしてみると、原告の前記認定の各所為は、被告会社の就業規則所定の懲戒事由に該当することは明らかである。 よって、被告会社が原告の前記各所為をもって、就業規則七二条九号、一〇号所定の事由に該当するものと認定したことは相当である。 |