ID番号 | : | 04934 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 尾婆伴事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 小料理店を経営していた女性の死亡にともない、その母が権利義務関係を承継した後、廃業をすることとし右小料理店に勤務していた従業員を即時解雇したことにつき、これを無効とした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法20条1項但書 民法628条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約の承継 / その他 解雇(民事) / 解雇予告と除外認定 / 天災事変 |
裁判年月日 | : | 1989年10月25日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成1年 (ヨ) 2759 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例551号22頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 野間賢・季刊労働法155号176~177頁1990年5月 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約の承継-その他〕 1 雇傭契約は、使用者がその固有の専門的技能を直接被傭者に教えることを内容とするなど、その契約における使用者が具体的な特定の人物であることを要素とするものでない限り、使用者の死亡によって当然に終了するものではない。Aと申請人との間の雇傭契約においては、Aは本件店舗の営業を包括的に申請人に委ねてきており、とくにAが入院して営業の実務に関与できなくなってからも、申請人が従来と変わりなく営業を継続してきたものであるから、使用者がAでない限り本件店舗における営業を継続することができないとか、その営業継続を前提とした本件雇傭契約を存続させることができないとかいえるものではないことが一応明らかである。 したがって、本件雇傭契約はAの死亡によって当然に終了するものではなく、被申請人が相続により本件雇傭契約における使用者の地位を承継したものというべきである。 〔解雇-解雇予告と除外認定-天災事変〕 2 被申請人は、民法六二八条にいうやむをえない事由があるとして解雇を主張するが、同規定による即時解雇は、労働基準法二〇条一項但書所定の要件もみたさなければその効力を認められないものであり、これを本件に関していえば、天災地変その他これに準じる程度の不可抗力に基づく事由が生じて、被申請人が本件店舗における事業の継続をすることが不可能になった場合でなければ、右即時解雇を有効とすることはできないというべきである。ところが、本件においては、Aの入院後及び死亡後においても申請人において本件店舗における営業を従来と変わりなくつづけてきたのであるから、右の民法及び労働基準法の規定の定めるやむをえない事由があった場合にはあたらないものというべきである。 したがって、被申請人のした右民法の規定に基づく解雇の意思表示は無効というべきである。 |