全 情 報

ID番号 04943
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 国鉄大阪工事局事件
争点
事案概要  二カ月の短期労働契約を十一年余にわたって更新してきた場合の雇止めにつき、実質において解雇にほかならず解雇法理が適用されるが、企業合理化が不可避であり臨時雇用員を解雇するのはやむをえないとされた事例。
参照法条 民法628条
労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1989年11月13日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (ワ) 635 
裁判結果 棄却
出典 労働判例551号12頁/労経速報1378号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 2 右事実によれば、本件契約は、あくまでも二カ月の期間の定めがある雇用契約であって、当初から期間の定めのない労働契約であったことを認めるに足る証拠はなく、更新を繰り返すことにより期間の定めのないものに転化したと認めることもできない。しかしながら、本件契約は、反復更新されて一一年余にわたり継続されてきたことにより、実質的には期間の定めのない契約と異ならない状態で存在していたこと、事務補助職の職務内容は正規職員に比して同程度に高度のものとはいえないが、課内の事務処理にあたり必要不可欠のものであったことに徴し、本件雇止めの意思表示は実質において解雇の意思表示にあたると解されるから、本件雇止めの効力の判断にあたっては解雇に関する法理を類推すべきである。したがって、大阪工事局において従来の取扱いを変更してもやむを得ないと認められる特段の事情の存しない場合には、期間満了を理由として雇止めをすることは許されないと解するのが相当である。
 〔中略〕
 2 以上の事実によれば、国鉄は高度の経営危機にあり、民間企業であれば倒産必至の状況下にあって、国鉄赤字を解消することが国民的課題となっていたこと、国鉄は右赤字解消のため設備投資の原則停止と共に人件費の削減を中心的な方策に据え、職員をも含めた人員整理計画を策定・実施したこと、いわゆる分割民営化に伴い、職員の一部は退職勧奨に応じ又は国鉄以外への転出を余儀なくされ、新会社に採用されなかったことからすれば、国鉄が人件費削減のために臨時雇用員制度の廃止を前提とした予算措置を組んだこと及び大阪工事局が設備投資費の圧縮に対応して原告を含む臨時雇用員五九人の雇止めを決定したことには企業経営上の観点から合理性がある。