全 情 報

ID番号 04947
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 東運輸事件
争点
事案概要  従業員が会社と顧客との間の運送業務委託契約を解消させ、自らが設立した新会社と運送業務委託契約を締結させた行為が不法行為にあたるとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 競業避止義務
裁判年月日 1989年11月22日
裁判所名 浦和地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ワ) 558 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報1353号105頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-競業避止義務〕
 4 そこで、以上の事実関係の下において被告らの不法行為の成否を判断するに、被告らは、いずれも前記1、2掲記のとおり原告会社の従業員として川崎営業所の業務に従事していながら、新会社を設立してこれと訴外A会社との間で本件日配商品運送委託契約と同じ内容の運送業務委託契約を締結することにより、原告と訴外A会社との契約関係を新会社と訴外A会社との間に移行させることを計画し、また、その間、川崎営業所の営業状況についての原告会社に対する報告が不十分であったり、川崎営業所関係者のみの手で同営業所の業務運営をし、更には、前記のとおり訴外A会社に嘆願書を差し出すことを図ったりしたものであり、原告と訴外A会社との間の本件日配商品運送委託契約関係は、原告主張の時期に終了するに至ったものである。しかしながら、以上認定の各事実関係、とりわけ新会社設立の計画は、前記のとおりの原告会社における地位、Bとの身分関係を有するCが中心になるものとして同人と共に、しかも、本件日配商品運送委託契約の締結ないし同契約に基づく業務の開始に先行して進められたものであり、被告らからBに対しその計画についての説明がされていなかった点についても前認定のとおりの無理からぬ事情が存したこと、新会社設立の計画は、当初C中心の構想であったものが後に被告らを中心とするように変わっていったが、C自身はその計画をあきらめてしまってからも、前認定のとおり新会社設立の意向が継続しているような態度を示しており、被告らにおいてCを中心とする計画には無理があると感じるようになってからも計画を推進したのは、既に新会社設立の段取りが固まっていたことによるものであること、その他川崎営業所発足のいきさつやその運営状況のもともとの実態等についての諸事実にかんがみると、被告らによる新会社設立の計画やその間における前掲被告らの個々の所為については、被告らの原告に対する不法行為の成立ないしは損害賠償義務の発生を肯認する前提としての違法性が存するとはいえないというべきである。