全 情 報

ID番号 04959
事件名 労働者災害補償保険金給付請求控訴事件
いわゆる事件名 正木土建日雇労働者事件
争点
事案概要  土建会社に日雇人夫として雇われていた夫の死亡につき、その妻が右死亡を業務上であるとして労災保険金を請求した事例。
参照法条 労働者災害補償保険法35条
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 審査請求との関係、国家賠償法
裁判年月日 1952年5月24日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和26年 (ネ) 276 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集3巻6号589頁
審級関係 上告審/04966/二小/昭29.11.26/昭和27年(オ)697号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-審査請求との関係、国家賠償法〕
 労働者災害補償保険の機構並前記法令の規定より見るに業務上の死亡、癈疾、疾病、負傷等同法所定の保険事故が発生したときは同法所定の保険給付請求者の為に単に抽象的な保険給付請求権が発生するだけであつて、前記行政機関の手続を経て始めて給付すべき金額又は金銭支給に代る療養の直接給付等が定まり、ここに給付請求権者は具体的な給付請求権を取得するに至るものと謂はなければならぬ。若し行政機関の保険給付を排斥する決定に不服あるときは裁判所に訴訟を提起し得ることは前記の通りであるが、此の場合も裁判所は前記法令の解釈上給付請求権ありと認めたときは行政機関の決定を取消す判決をするのであつて、其の判決が確定すれば行政機関は其の事件に付て裁判所の給付請求権ありとの判断に拘束されて給付の決定を為すに至るわけで、如何なる場合も行政機関の決定を待たなければ具体的な保険給付請求権を取得するものではない。即ち保険給付請求権を抽象より具体への実現は行政機関の手続のみによりて之を為し得るのであるから、行政機関の手続を不要なりとして直接国を相手として裁判所に訴を提起して之と同一の効果を収めることは同法の許さざるところであると謂はなければならぬ、従つて保険給付請求権者(抽象的)は行政機関の決定を待つことなく直接裁判所に国を相手として一定の保険金給付(具体的)を求める請求権を有せざるものであるから斯様な請求は失当であつて棄却を免れざるところである。