ID番号 | : | 04967 |
事件名 | : | 労災保険審査決定取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 岐阜労災保険審査会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 運転手として就労していた者の労災事故による死亡につき会社が重大な過失により保険料を納付しなかったとして政府が保険給付の制限をしたのに対し、会社が右処分を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法12条(旧) 労働者災害補償保険法18条(旧) 労働者災害補償保険法35条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 審査請求との関係、国家賠償法 労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 保険料の怠納、労働者側の重過失等による給付制限 |
裁判年月日 | : | 1954年12月17日 |
裁判所名 | : | 名古屋高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和28年 (ネ) 383 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働民例集5巻6号796頁 |
審級関係 | : | 上告審/04981/最高二小/昭32. 5.31/昭和30年(オ)184号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-審査請求との関係、国家賠償法〕 労働者災害補償保険審査会は保険給付に関する決定即労災保険に関し政府が保険給付を為すか否か及支給額に関する決定の当否を審査するのみであつて進んで事業主に対し補償の責を負担させる権限を有するものでないことは労災保険法第三十五条の趣旨に照し明らかである。従て被控訴人が前認定のように控訴人に対しAの遺族補償費二十万六千三百八十円を同人の配偶者Bに支払うべき旨の決定を為したのはその権限を逸脱した違法があるように一応見えるが、本件遺族補償費葬祭料等労働者の業務上の死亡による補償についてはその使用者は労働基準法により之が補償を為すべき義務があると共に労災保険法の給付があれば労働基準法の補償義務を免れる関係にある。それに本件審査請求は保険受給権利者が為したのではなく、使用者である控訴人が申立てた関係等に照し乙第十号証の審査決定書を通覧すると右決定は主文と理由の区別が明確を欠き主文の趣旨並理由の説明また適切でない憾があるけれどもその趣旨とするところは要するに本件遺族補償費及葬祭料は国に於て給付すべきであるとの控訴人の異議申立に対し国は葬祭料のみを給付するが遺族補償費は給付しない。事業主である控訴人が之を支払うべきであると云うことを表示したものと解し得られるから右審査決定は控訴人の審査請求の一部を認容し他を排斥した処分であると解するのが相当であつて被控訴人の権限外の処分なりと解するのは妥当でない。 〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-保険料の怠納、労働者側の重過失等による給付制限〕 本件事故は控訴人が保険料を怠納した期間中に生じた事故であることは明瞭であつて斯る場合には労災保険法第十八条に依れば政府は保険給付の全部又は一部を支給しないことが出来ると規定している。右規定の給付制限の範囲並限度は政府の自由裁量に属し特に裁量権の濫用(裁量権の限界超過)と認められない限り行政庁の裁量に一任され裁判所は之を審判の対象と為し得ないものと解するのが相当である。本件に於て被控訴人がAの業務上の死亡による保険給付請求について右裁量権に基き諸般の事情を斟酌して葬祭料につき保険給付を為し遺族補償費につき給付しない旨の決定を為したことについては裁量権の濫用と認むべき事由は毫も存しないから被控訴人が労災保険法第十八条の規定を適用して前記決定を為したことは固より適法であると謂わなければならない。 |