ID番号 | : | 04984 |
事件名 | : | 労災保険審査決定取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 高長谷建設事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 建築会社の現場監督がアパートの竣工検査を済ませ、帰宅の途上に列車に接触して死亡した事故につき業務上か否かが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法12条1項(旧) 労働基準法79条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 通勤途上その他の事由 |
裁判年月日 | : | 1958年1月16日 |
裁判所名 | : | 千葉地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和30年 (行) 13 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働民例集9巻1号84頁 |
審級関係 | : | 控訴審/04990/東京高/昭34. 6.20/昭和33年(ネ)272号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-通勤途上その他の事由〕 原告は右Aの死亡は業務上の災害に因るものであるのに、右審査会が業務外の災害に因るものと認定したのは違法であると主張するので、右は果して業務上の災害かどうかについて考えてみるに、当時Aは前記B株式会社の施工していたC株式会社船橋営業所の新築工事並に千葉市(略)のDアパート建築工事(この工事の施工者がB株式会社であつたかどうかについては争があるが、少くとも工事施工名義人が右会社であつたことについては争がない)の各現場監督に従事していたこと、事故当日、Aは右Dアパートの竣工検査に立会うため、船橋市の右C株式会社船橋営業所工事現場からDアパートの工事現場に到り、所用をすませて同所を立去り国鉄幕張駅に赴いた際、前記災害に遭つたものであることについては当事者間に争がない。そして、成立に争のない乙第七号証、同第一五号証、証人E、同F、同G(但し後記措信しない部分を除く)の各証言を総合すれば、Aは右竣工検査の終了後Dアパートの建築主E方に於て夕食を供されたが、その際「時間がない」「終車に間に合わない」などと云つて時間を気にしていたこと、同席していたGに対し「汽車の都合があるからお先に失礼します」と述べて、午後七時五分前頃前右E方を立去つたものであることが認められるし、また成立に争のない乙第二号証及び第一〇号証によれば、Aは前記一九時一分幕張駅通過の列車が同駅に進入する直前、同駅北側の畑を横切り、更に線路を横断して下り線ホームによじ登ろうとした際に、右列車に接触したこと、同駅発一九時四分千葉行下り電車は千葉駅発一九時二三分館山行最終列車に連結していたことが認められ、更に原告本人Hの供述によりAが自宅に帰るのには房総西線大貫駅にて下車するのであることが認められ、これ等の事実を総合して考えれば、AはE方を辞して、幕張駅一九時四分発の下り電車に乗車して自宅に帰るべく同駅に向つたが、前記通過列車の進行してくるのを目撃して、これを下り電車と見誤り、急遽線路を横断し、ホームによじ登ろうとしたものであると認めるのが相当であり、証人I、同G、原告本人Hの各供述中右認定に反する部分はたやすく措信できずその他右認定を動かすに足る証拠はない。 結局、AはDアパートの竣工検査に立会つて帰宅の途次本件の災害に遭遇したものと認めるの外ないから、本件災害を業務上の災害と認めることはできない。 |