ID番号 | : | 04996 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本道路舗装会社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 道路工事に従事中の労働者が進行してきた自動車にはねられ被災した事故で加害者に対して損害賠償を請求した際に、労災保険の障害補償との調整が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法84条2項 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1961年9月18日 |
裁判所名 | : | 仙台高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和36年 (ネ) 148 昭和36年 (ネ) 187 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 訟務月報7巻10号1945頁 |
審級関係 | : | 一審/04829/仙台地/昭36. 4.11/昭和34年(ワ)54号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕 第一審被告は、第一審原告が受給した労働者災害補償保険法(以下単に労災法という。)にもとづく障害補償金は、被災者の財産上の損害のみならず、その精神上の苦痛をも填補するものであるから、すでに右の如き給付がなされた以上、もはや第一審被告にはその賠償義務はないと主張する。そして、第一審原告が昭和三四年五月下旬労災法にもとづく障害補償費として金八六、九二一円の支給を受けたことは、さきに認定したとおりである。しかし、労働者災害補償保険制度は、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、廃疾または死亡に対する労働基準法(以下単に労基法という。)所定の障害補償義務につき、事業主に保険料を負担させ、国が事業主に代わり履行して、災害補償請求権を迅速かつ公正に確保するとともに、一方事業主の経済的負担をも軽減しようとする制度であるから、労災法による保険給付は、その実質において、労基法第七七条にいうところの障害補償となんら異るところはなく、その保険給付額は画一的に法定されていて、これは、労働者またはその遺族に対し、その労働力の回復または生計維持をはかるために、積極的および消極的の財産上の損害を填補しようとするものであつて、その精神上の苦痛を慰藉することまでをも目的とするものではなく、したがつて、労働者またはその遺族が労災法による保険給付を全額受給した場合においても、その中には慰藉料は包含されていないのであつて、右のほかさらに慰藉料の支払を認めても、別段受給者に二重の損害の填補を得させこれを利得せしめるという不合理は生じないのであるから、第一審原告が右の如く労災法による障害補償金を受給したからといつて、第一審被告に対し不法行為による損害の賠償として慰藉料の支払を請求し得ないものとなすことはできないものというべきであり、しかも、右の如く、その障害補償金の額が財産上の損害額にも満たない本件においては、第一審原告は、右の障害補償金受給にかかわりなく、第一審被告に対して本件慰藉料の支払を請求し得るものというべきであるから、第一審被告の右主張は採用できない。 |