全 情 報

ID番号 05005
事件名 求償金請求事件
いわゆる事件名
争点
事案概要  事故が第三者の行為によって生じた場合で被災者・その遺族が加害者に対する損害賠償請求権を放棄した場合において、被災者に労災保険の給付を行なった国が加害者に対して求償した事例。
参照法条 労働者災害補償保険法20条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 国の求償権、示談との関係
裁判年月日 1963年1月21日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ワ) 503 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ141号118頁/法曹新聞181号16頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-国の求償権、示談との関係〕
 衝突地点附近は、道路交通取締法施行令(昭和二八年勅令第二六一号)第二九条第一項所定の警音器掛声その他の合図をしなければならない場所に該当しないし、右認定の如き緩いカーブの道路では、かりに、その見透しがより以上悪いとしても、具体的状況により警音器を吹鳴することが安全運転のために必要と認められる場合以外警音器を吹鳴する義務はなく、本件では警音器を吹鳴したり、掛声その他の合図をしなければならない具体的状況にあつたとは認められないので、この点についての被告の過失もない。このような場所を通行する自動車運転者としては、一人一人が事故が発生しないように注意し通行区分を守り、徐行すればよいので、それ以上に、一般的義務として、警音器吹鳴義務を課するのは、自動車運転者に対し、酷であり、その必要もない。
 その他、被告の過失と目すべき点は、本件証拠上あらわれず、(証拠-省略)によると、Aは、D電柱の北方約一七米にあるB橋を通過するときは、道路中央線より左側を時速約四〇粁でC車を運転したが、仕事の関係で気が急いでいたのと、交通閑散なのに気をゆるし、降雨中で着用の眼鏡に雨滴がかかり、前方注視が困難なのに拘らず、B橋通過後は更に速度を増し、そのため、D電柱附近のカーブを左に曲る際左側を通ることが困難で、道路中央線を越え、右側に入つて通行したため本件事故が発生したもので、本件事故の原因は、一にかかつて、Aの通行区分違反にあり、右違反は、カーブにさしかかつた際徐行しなかつたことに基因するものというべきである。
 以上認定の如く、本件事故につき、被告にはその原因をなす過失が認められないのであるから、原告のその余の主張事実に対する判断をするまでもなく、原告の本訴請求は失当として棄却すべきである。