ID番号 | : | 05008 |
事件名 | : | 求償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 宇徳運輸事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 補償の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合で被災者・その遺族が加害者に対する損害賠償請求権を放棄した場合に、被災者に労災保険の給付を行なった国が求償権の行使を行いうるかどうかが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法20条1項(旧) |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 国の求償権、示談との関係 |
裁判年月日 | : | 1963年7月18日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和35年 (ワ) 6678 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報351号33頁/タイムズ151号167頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 古賀哲夫・法律時報36巻3号92頁 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-国の求償権、示談との関係〕 労災保険制度は、被災労働者等の被つた損害を補償することを目的とするものであるから、補償の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合に、被災労働者らが第三者に対する損害賠償請求権を放棄し、その損害賠償請求権が消滅したときは、政府は、その限度において、保険給付をする義務を免れるものと解するのが相当である(労災法第二条第二項参照)。従つて、政府がその後に保険給付をしても、右損害賠償請求権が存続することを前提とする労災保険法第二〇条第一項による法定代位権が発生するいわれがない。被告は、被災労働者らは、保険給付を受けることにより、政府に帰属すべき第三者に対する損害賠償請求権を保全すべき公法上の義務があるから、右請求権を放棄しても、これをもつて政府に対抗できない旨を主張する。しかし、被災労働者らの第三者に対する損害賠償請求権は通常の不法行為上の債権であり、被災労働者らはこれを放棄する自由を有するのであつて、被災労働者らがこれを放棄すれば、右損害賠償請求権は消滅し、政府は保険給付をする義務を免れ、政府の労災法第二〇条第一項による法定代位権は発生しないのであるから、被災労働者らがこれを保全すべき義務を負うはずがなく、その義務があることを前提とする被告の右主張は理由がない。 |