ID番号 | : | 05010 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 旭川小型タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 第三者災害に関連して国が加害者に対して求償権を行使したケースで、自動車事故による負傷者の損害が示談契約により放棄されたかどうかが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法20条1項 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 国の求償権、示談との関係 労災補償・労災保険 / 損害賠償等との関係 / 労災保険と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1964年1月27日 |
裁判所名 | : | 旭川地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和37年 (ワ) 17 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 訟務月報10巻4号585頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-労災保険と損害賠償〕 労災保険制度は、もともと被災労働者らの蒙つた損害を補償することを目的とするものであるから、補償の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合に被災労働者らが第三者に対する損害賠償請求権の全部又は一部を放棄し、その限度において損害賠償請求権が消滅したときは、国は右消滅の限度において保険給付をする義務を免れると解するのが相当であり、従つて、その後において、国が保険給付をしたとしても、国は労災保険法第二〇条第一項による法定代位権を行使し得ないといわなければならない。これを本件についてみるに、訴外Aは前記のように国から保険給付を受ける以前に被告から三六〇、〇〇〇円の損害賠償請求権の支払を受け、これを超える部分は放棄しており、従つて、その限度において損害賠償請求権は消滅しているのであるから、原告としては、訴外Aに対して保険給付をする義務はなかつたというべきであり、従つてこれをしたとしても、被告に対して、訴外Aの被告に対する損害賠償請求権を代位行使することは許されないといわなければならない。〔労災補償・労災保険-損害賠償等との関係-国の求償権、示談との関係〕 原告の主張によれば、本件のように、労働者の死亡が第三者の行為によつて生じ、かつ死亡労働者と同一生計内にあつた遺族が多数いる場合に、受給付権者に支給された遺族補償費の額が、受給付権者が第三者に対して有する損害賠償請求権の額を超える場合には、受給付権者以外の遺族は、右超える額だけ、その者が第三者に対して有する損害賠償請求権を行使し得ないと解さざるを得ないであろうが、もしこのように解するならば受給付権者以外の遺族は、現実に保険給付を受けないにも拘らず、その者が第三者に対して有する損害賠償請求権を失うか又はその額を減額される場合があることとなり、遺族の生活の保障という面からみて妥当でない結果を生ずるから、この点に関する原告の主張はにわかに採用することができず、労災法第二〇条にいう「補償を受けた者」とは、その文言どおり、現実に国からの保険給付によつて補償を受けた者を指し、従つて国は、保険給付によつて、この者以外の者が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位行使することは許されないと解すべきである。 |