全 情 報

ID番号 05013
事件名 遺族補償等処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 興国林材事件
争点
事案概要  伐材搬出業者に雇用されている馬橇夫が作業場からの帰宅途上で被った災害が業務上災害にあたるかどうかが争われた事例。
参照法条 労働基準法79条
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務中、業務の概念
裁判年月日 1964年11月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (ネ) 1325 
裁判結果 棄却
出典 東高民時報15巻12号243頁/タイムズ172号198頁/訟務月報10巻12号1680頁
審級関係 一審/05004/東京地/昭37. 6. 1/昭和34年(行)94号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務中、業務の概念〕
 控訴人はAが馬そりを操作して自宅からトラック土場まで往復する行為は労働契約上明示された業務行為又は労働慣行により業務行為とされている行為もしくは使用者とAの暗黙の合意により業務行為とされていた、と主張するが、B株式会社とA間の労働契約の内容は原判決認定のとおりであつて、その外に自宅からトラック土場までの往復行為を業務行為とするか否かについて何等の取極めは勿論、馬およびそりについてAがこれをB株式会社に賃貸する旨の契約の存在したことを認めうる証拠は全く存在しない。又B株式会社とA間の労働契約における賃金の取極めは石当り一五〇円というだけで、その他に何等の取極めもなされていないのであるから、前記往復行為を労働契約上明示された業務行為ということはできない。控訴人はAの賃金を分析し、その中には馬およびそりの管理、飼育、現場までの往復移送に対する手当、馬の使用料(損料)が含まれている、と主張するが、右認定の賃金のうちいずれの部分が純粋の労賃、どの部分が馬やそりの管理等の手理、どの部分が馬の使用料と明示して契約された証拠はないし、Aの賃金は同人が実際に木材搬出の作業に従事し、その実績に基づいて定められたものであることは原判決認定のとおりであつて、自宅からトラック土場までの往復行為や馬の管理飼育まで、Bに対する労務の一部として、その報酬を含めて賃金を定めたものとは到底考えられない。従つて控訴人の右主張は理由がない。又当審証人C、同D、同Eの証言によれば、馬が控訴人主張のような性質を有していること、馬そりによる自宅からトラック土場までの往復に或る程度の危険が伴うこと、従つて馬そり夫は馬を馬小屋に格納するまで緊張を必要とし、解放感がないこと、木材搬出作業については出来高賃金である関係で、業者は労働者の勤怠についてあまり監督を必要とせず、就労状況についてあまり具体的、個別的な指揮監督をしないことは認められるが、かかる事実があるからといつて、自宅からトラック土場までの往復行為が労働契約上業務行為として明示されている、とは到底いい得ない。又控訴人主張のような労働慣行や暗黙の合意を認めるに足る証拠はない。