全 情 報

ID番号 05016
事件名 地位保全仮処分事件
いわゆる事件名 メトロ交通事件
争点
事案概要  自動車運転手がメーターを倒さずに婦人を乗せて走ったことを理由として懲戒解雇された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働組合法7条1号
体系項目 解雇(民事) / 解雇手続 / 解雇理由の明示
裁判年月日 1958年2月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和32年 (ヨ) 4005 
裁判結果 認容
出典 時報143号33頁/労経速報270号8頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇手続-解雇理由の明示〕
 五 申請人に対する懲戒解雇の理由となつた事実は、
 「申請人が昭和三一年一〇月二六日午前二時頃A株式会社(同会社は、かねてから被申請会社が乗車賃の月払契約を締結している船会社の乗客で被申請会社のタクシーを利用するものがある場合には、被申請会社にその旨電話連絡をしている。)のタクシー乗車地で客待中右A株式会社の事務員Bがその日につく船もなくなつたので食事に行くというので、申請人も同所では最早仕事がないことが判り、空腹でもあつたので自分も食事に行くことにしたが、Bから、かねてA株式会社の用務としてばかりでなく個人的にも申請人等の会社運転手に乗客を世話して貰つているので、Bを自己の車に同乗させ、メーターを倒さないまま約一粁余離れたC駅附近の食堂まで来たが、同所が満員のため、同所からBの知合の婦人をも乗せ、更に同市(略)附近の食堂に赴いたこと」であつて、申請人のかかる行為は、会社が予じめ禁止している点に反している点はあるが、その目的が私利を得る目的でもなく、会社や申請人に対し客のあることを電話連絡してくれたり、客を世話してくれる前記Bをサービスのつもりで同乗させたにすぎないから、かかる事実だけで申請人を前記就業規則の条項に該当するとして懲戒解雇することはやや苛酷な措置と認められ、この点に関する会社の就業規則の適用について合理的理由に乏しいこと
 六 会社は当時争議に入つていなかつた第二組合の組合員の規則違反に対し必しも厳格な態度をとつていなかつたこと
 例えば、昭和三一年一〇月下旬組合員のDが第二組合員のE運転手のメーター不倒行為を現認したので、その旨を会社に組合の神奈川支部書記長を通じて申告したのに対し、会社はDについて調査することなく、E運転手にメーター不倒行為なしと断定していること
 以上の諸事情を綜合して見れば、本件解雇は申請人がF労働組合の組合員として争議に参加していたために争議不参加の第二組合員とは不公正に差別されて受けた不利益待遇であると認めるのが相当である。
 従つて、申請人に対する本件解雇は不当労働行為として無効であるというべきである。