ID番号 | : | 05023 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 港タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | たった一回のメーター不倒行為を理由としてなされたタクシー運転手の懲戒解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 |
裁判年月日 | : | 1958年6月27日 |
裁判所名 | : | 静岡地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和33年 (ヨ) 108 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集9巻5号601頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 加藤和夫・保原喜志夫・ジュリスト179号51頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕 懲戒解雇はその事由が情状において特に悪質重大で客観的に雇傭関係を継続することが困難と認められるときに限るものというべきである。このことは、同規則第五九条に、「但し特に情状酌量の余地があるか、又は改悛の情が明らかに認められるときは懲戒を免じ、訓戒に止めることがある」と規定されていることからも伺うことができる。以上説示した解雇基準に違反する解雇は無効と解すべきである。 そこでこの解雇基準に前認定の事実をあてはめて考えるに、【1】申請人等の懲戒該当行為が時間的に早朝で【2】しかもその場所及び機会が定期的な新聞運般の帰路に行われたこと、更にこれにつけ加えて、【3】各一回であつて、これまでこの種行為について被申請会社から注意をうけたことのないこと、【4】監査方法が学生の身分を有するものを囮として使用してなされたもので、必ずしも公正な方法でないこと、【5】従来かかる行為について必ずしも懲戒解雇処分にしていないこと、【6】申請人等の大部分が妻子をかかえているのに、一日平均十数時間勤務に対し給料が月額最高一六、〇〇〇円にとどまつていること(【3】【5】【6】は申請人等提出の疎明資料によつて認めうる)を綜合考覈すれば、今回に限つて申請人等の懲戒該当行為は譴責程度の処分に止めるをもつて相当とし、解雇事由には該らないものというべきである。従つて、本件解雇の意思表示は無効といわなければならない。 |