全 情 報

ID番号 05034
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 橋本金属工業事件
争点
事案概要  機械の整備に関連して職長を無視した発言をしたことを理由とする解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法20条
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 上司反抗
裁判年月日 1958年11月12日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和33年 (ヨ) 4059 
裁判結果 却下
出典 労働民例集9巻6号1039頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-上司反抗〕
 申請人は会社の機械が整備されていないと考えていたので、昭和三三年四月上旬その改良を会社側に申し入れたりしていたが、同月一九日朝職長の了解を得ずに旋盤を一部解体してその整備に当つていたところ、会社常務取締役Aからその理由を聞かれたので、「道具はないし、この旋盤は改造しないと使えない。」といつたところ、Aから「勝手なことをされては困る。職長の指示を受けたのか。」といわれたので、あんな素人の若憎に話しても無駄だという趣旨の発言をしたため、同取締役は同日会社専務取締役と相談の上申請人が職長を無視した発言をし、職場の秩序を乱したとして解雇することにきめ、会社労務係B以知にその旨を告げ、その手続をとるように命じた。
 Bは、同日会社代表取締役名義の申請人との雇用関係を一ケ月後に終了させる趣旨の解雇予告書を作成し、この書面を同日申請人に見せ、かつ、口頭で同年五月一九日に雇用関係を終了させる旨通告した。
 三 本件解雇の経緯は以上のように認定するのが一応相当であつて、右認定をくつがえし、本件解雇が予告なく行われたとか、或いは会社は申請人が機械の改良を企図したことだけをとり上げて解雇の理由にしたと認めるに足りる疎明はない。
 右解雇の経緯によれば、次のように判断するのが相当である。
 (1) 会社は昭和三三年四月一九日申請人に対し同年五月一九日をもつて雇用関係を終了させる旨の解雇の予告をしたのであるから、本件解雇は労働基準法第二〇条に違反するところはないというべきである。
 (2) 次に会社が申請人を解雇したのは、申請人が職長を目してあんな素人に話してもだめだという趣旨の発言をしたことを以て職場の秩序を乱したものと考えたことによるものであつて、会社が右のように考えたことは前記認定の状況の下において不相当とはいえないから、会社が社内の秩序を維持する必要上かかる言動をする申請人との雇用関係を継続することを欲しなかつたこともまた不相当とはいえないので、かかる解雇権の行使をもつて解雇権が認められた本来の目的を逸脱した社会的に不相当なものということはできない。