ID番号 | : | 05077 |
事件名 | : | 遺族補償費等不支給処分取消請求上告事件 |
いわゆる事件名 | : | 十和田労基署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 自家用車による通勤途上の事故死につき業務上の死亡に当るか否かが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法7条1項 労働者災害補償保険法16条 労働基準法79条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 通勤途上その他の事由 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務遂行性 |
裁判年月日 | : | 1984年5月29日 |
裁判所名 | : | 最高三小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和57年 (行ツ) 182 |
裁判結果 | : | 棄却破棄 |
出典 | : | 労経速報1191号10頁/労働判例431号52頁/訟務月報30巻12号2627頁/裁判集民142号183頁 |
審級関係 | : | 控訴審/仙台高/昭57. 9.29/昭和55年(行コ)4号 |
評釈論文 | : | 荒木誠之・民商法雑誌91巻5号826頁/田中信義・昭和59年行政関係判例解説409頁 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務遂行性〕 労働者の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「災害」という。)が労働者災害補償保険法に基づく保険給付の対象となるには、それが業務上の事由によるものであることを要するところ、そのための要件の一つとして、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことが必要であると解するのが相当である。そして、通勤途上において発生した災害は、労働者が、使用者の提供した専用の交通機関を利用していた場合、又は通勤の途中で業務を行うことを予定していた場合等、労働者が通勤途上においてもなお事業主の支配下に置かれていたと認めるべき特別の事情がある場合を除き、業務上の事由によるものということはできないと解すべきである。〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-通勤途上その他の事由〕 原審の適法に確定したところによると、Aの自宅付近から本件工事現場付近までは列車、バス等の公的交通機関が通じており、Aがこれを利用することは、勤務時間との関係で相当な不便はあったが、ともかく可能であったこと、また、Aが自家用車で本件工事現場まで運搬していた道具類のうち砂通し、トロ舟、くわ、スコップ等の大型道具類は、雇主が現場に用意したものを使用すればよく、自己のものを使用する必要はなかったことが明らかであり、また、そのほかの手道具類は、列車、バス等の交通機関を利用した場合に携行が困難というほどのものではなかったとみられるのであって、これらの事実によれば、Aの本件工事現場への自家用車による通勤は、他の交通機関を利用した場合よりも便利で、種種の面から好都合であったとみられるものではあるが、本件工事現場への通勤方法として他に選択の余地がないほど必要性が強く、やむをえないものであったとまでみるのは、困難であるといわなければならない。そして、交通が不便な地域において通勤のため自家用車を利用することは、当時においても決して特殊な現象ではなかったことをも併せ考えると、Aが自家用車による通勤をするに至った経緯において、Bの意向が強く働いていたことは否めないにしても、そのことから直ちに本件においてAはその自家用車による通勤途上においてもなお事業主の支配下にあったものとみるのは相当でないといわなければならない。そのほか、原審の確定した事実関係からは、Aが通勤途上においてもなお事業主の支配下に置かれていたと認めるべき特別の事情があるとはいえない。 |