ID番号 | : | 05085 |
事件名 | : | 裁決取消等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 川越労基署長事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 監督署長の障害補償の支給決定(一二級)に対して審査請求・再審査請求がいずれも棄却されたため、右裁決の取消と監督署長に対して休業補償給付の支給の実施を求める訴えを提起した事例。 |
参照法条 | : | 行政事件訴訟法3条 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 行政処分の存否、義務づけ訴訟等 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 審査請求との関係、国家賠償法 |
裁判年月日 | : | 1985年9月13日 |
裁判所名 | : | 浦和地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和60年 (行ウ) 3 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | タイムズ611号37頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-審査請求との関係、国家賠償法〕 一 原告の本件訴えのうち、埼玉労働者災害補償保険審査官Aのなした審査請求事件についての決定および労働保険審査会のなした裁決の各取消しを求める部分は、行政事件訴訟法にいう裁決の取消しを求める訴え(行政事件訴訟法三条三項参照)にあたることは明らかであるが、行政事件訴訟法一一条一項によれば、同法にいう裁決の取消しの訴えは、裁決をした行政庁を被告として提起すべきものとされているところ、本件訴えにおいて原告は原処分庁である川越労働基準監督署長を被告としているから本件訴え中前記決定および裁決の取消しを求める部分は被告適格を欠くものとして不適法というべきである。(なお、行政事件訴訟法一五条一項は、取消訴訟において、原告が被告を誤った場合の救済方法につき規定しているが、同法一〇条二項によれば処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては処分の違法を理由として取消しを求めることができないとされているところ、本件訴えにおいて原告は、単に原処分の違法を主張するのみで、裁決固有の違法を主張するものではないから、本件訴えが原告本人自身によつて提起され、訴訟追行がなされているいわゆる本人訴訟であることを斟酌しても、裁判所が原告に対して被告の変更の申立てを促すことが相当の事案とも認めがたい。)〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-行政処分の存否、義務づけ訴訟等〕 二 つぎに原告の本件訴え中被告に対し休業補償給付の支給実施をせよとの判決を求める部分について検討する。 右の部分は結局休業補償給付に関する被告の決定を求めるものと解されるが、休業補償給付のような保険給付に関する決定は労働者災害補償保険法三五条、三七条等の規定からみて行政処分であると解すべきである。 そうすると、原告の本件訴え中被告に対し休業補償給付の実施をせよとの判決を求める部分は、行政庁たる被告に対し裁判所が特定の行政処分をなすべきことを命ずるいわゆる無名抗告訴訟としての義務づけ訴訟にあたるというほかないが、わが国の現行法制の下では行政権行使に関する司法審査は行政権の第一次的判断である行政処分の事後審査を原則とすべきことは多言を要しないから、例外的に義務づけ訴訟を許容しなければならないような特段の事情が認められない限り、義務づけ訴訟は不適法というほかないところ、本件の場合何らかの特段の事情も認められないから、本件訴え中休業補償給付の実施をせよとの判決を求める部分も不適法である。 |