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ID番号 05102
事件名 労働保険審査請求に対する裁決の取消請求控訴事件
いわゆる事件名 土浦労基署長(呉羽プラスチック)事件
争点
事案概要  フイルム原反の製造に従事してきた従業員の肺サルコイドージスが業務に起因するものか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法75条
労働基準法施行規則別表1の2
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
裁判年月日 1987年6月25日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (行コ) 6 
裁判結果 棄却
出典 労働判例501号34頁
審級関係 一審/05096/水戸地/昭62. 1.22/昭和60年(行ウ)10号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 控訴人がその会社における業務においてさらされる前示原料等の化学物質については規則別表第一の二第四号8で、特にその原料である塩化ビニル及び熱分解生成物である塩化水素については、規則別表第一の二第四号1に基づき労働大臣が昭和五三年三月三〇日労働省告示第三六号をもって指定した単体たる化学物質として、また、控訴人が業務する場所に飛散する粉じんについても、規則別表第一の二第五号でそれぞれ規制されているので、これらを、一応、有害物というのは妨げないにしても、前記告示において定める塩化ビニルにさらされる業務による疾病とは、「中枢神経性急性刺激症状、皮膚障害、麻酔、レイノー現象、指端骨溶解又は門脈圧亢進」主たる症状又は障害とする疾病であり、塩化水素(単体たる化学物質としてのそれ)にさらされる業務による疾病とは、「皮膚障害、前眼部障害、気道障害又は歯牙酸蝕」を主たる症状又は障害とする疾病であって、その規制の趣旨からしても、前示のような病理的特徴及び症状の本件疾病は指定されていないと解されるから、本件疾病を規則別表第一の二第四号1に該当する疾病ということはできない。また、(証拠略)によれば、会社において、控訴人と同じ業務に従事している者のうち、控訴人を除いては、本件疾病に罹患した者がいないこと、フィルム原反の原料である化学物質は本件疾病の病因として関係がないとする意見もあることが認められるから、本件疾病を規則別表第一の二第四号8に該当する疾病ということもできない。本件疾病は、「じん肺症又はじん肺法に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則第一条各号に掲げる症状」ではないことが明らかであるから、規則別表第一の二第五号に該当する疾病でもない。本件疾病は、規則別表第一の二第八号の労働大臣が指定した疾病にも該当しない。
 前示の原料等、特に塩化ビニル及び塩化水素、更に粉じんを有害物というにしても、結局、これらと本件疾病との間に因果関係があると認めることができないので、本件疾病を規則別表第一の二第九号の「業務に起因することの明らかな疾病」ということもできない。